IFA会場で集中試聴
ソニーの旗艦ヘッドホン/ウォークマン/HPA「WM1Z/Z1R/ZH1ES」一斉レビュー
■初の据置型ヘッドホンアンプ「TA-ZH1ES」は驚異的な低ノイズ
WM1A/WM1Zの内蔵アンプが大幅に強化されたとはいえ、デスクトップで聴くときはヘッドホンアンプと組み合わせることをお薦めする。そして、シグネチャーシリーズの「TA-ZH1ES」(関連ニュース)とペアを組むのが理想だ。同シリーズは共通のコンセプトで設計されたと冒頭で紹介したが、もちろんそれぞれ単独で使っても高い実力を発揮する。しかし、再生音からは、ZH1ESも含めて、互いに組み合わせたときの相乗効果を聴き取ることができた。
WM1ZとZ1Rに共通するキーワードは「質感」と「空気感」だった。そして、ZH1ESの音からも、まさに質感と空気感へのこだわりを聴き取ることができる。無音から音が立ち上がるときの気配や奏者の息遣いまで生々しく再現する静寂感があり、その静寂を支えにした広大なダイナミックレンジは、R.シュトラウスなど大編成の管弦楽を聴いても、限界を感じさせない。
S-Master HXはウォークマンにも採用している技術だが、ZH1ESはそれにアナログアンプの技術を組み合わせて歪やノイズをさらに減らし、無音から弱音にかけての微小信号領域の再現性を大幅に改善したことが新しい。
その巧みな回路構成もさることながら、USB-DACやDSDリマスタリングエンジンを含む大規模なデジタル回路とアナログ回路が同居しているにも関わらず、ここまでの低ノイズを実現していることにも感心させられる。ヘッドホンアンプは、スピーカーを駆動する通常のアンプ以上に優れたS/Nが求められるので、デジタル回路からのノイズ輻射を抑えることは不可欠だ。本機の内部を見るまで、おそらく随所にノイズを物理的に遮蔽するシールドが施されていると予想していたのだが、実際にはそれは見当たらず、それどころかメイン基板を複数の回路ブロックが共有している。
その点をエンジニアに尋ねると、満足のいくノイズ対策が完成したのは、グラウンドの統一など、アナログ的ノウハウの賜物だという答えが返ってきた。デジタルとアナログを共存させるうえで、ホームオーディオで培ったノウハウが見事に生かされている。