[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第166回】iPhone 7に最適? 普通のイヤホンをBluetooth対応にするケーブルを試す
■Bluetooth最大の懸念…音質チェック!
さてBluetooth移行を検討するにあたっての懸念点は、充電の面倒さもあるだろうが、一番大きなものは伝送時の圧縮処理による音の変化、その感触や度合いだろう。今回はWestone「AM Pro30」の付属ケーブルで、有線接続からの音の変化を確認した。
ただし、このケーブルは伝送時のコーデックとしてSBC、aptX、AACに対応しており、その中で特にaptXを「『aptXテクノロジー』の採用により、ピュアなフルレゾーリュ―ションサウンドをワイヤレスでお楽しみいただけます」とプッシュしている。おそらくaptX接続時に最良の音質になるはずだ。だがiPhoneシリーズはaptXに対応していないため、今回はAAC接続での試聴、その印象をお伝えしていこう。
率直に言って、もちろん音は変わる。例えばシンバルやアコースティックギターなど高域の音色は、有線では透明感があり、高域から超高域がなだらかにすっと自然に伸びている…逆に言えばすっと綺麗に落ちているように感じられる。このAM Proシリーズの特徴でもある、音の抜けの良さや広がりの豊かさもポイントだ。…というかAM Pro30、いいな。
ワイヤレスにすると超高域に頭打ち感が出て、頭打ちになる手前の高域が目立ってくる。例えばシンバルやアコースティックギターでは音の色合いや響きよりも、カチッとしたアタック感の方が割合として強くなるといったような変化だ。それも影響してか、抜けや広がりも有線時の見事さには少し及ばず、全体にコンパクトにビシッとまとめてくる印象。
しかし「BluetoothにしたらAM PRO 30が台無しになった…」なんて残念すぎる話にはなっていない。標準有線でのiPhone SE直結を100点として、それなりのクラスのLightningポタアンを使ったら120点というように表現するとしたら、このWestoneのBluetoothケーブルはワイヤレスでありながらも80〜90点くらいまでは引き出してくれるといったところ。
80点とか90点とかいう数字は僕の印象にすぎないが、何にしても音が変わるのはちょっと…という方も少なくはないだろう。だがそこは、話は最初に立ち戻るが、
「iPhoneで音楽を聴くのは手軽さ身軽さ重視なときだから、変換アダプタとかポタアンとかは使いたくない!…だったらもっと思い切って手軽さ身軽さに振って、Bluetoothを試してみるのもありかも?」
…というところと秤にかけて、どう判断するかだ。たとえば本命のイヤホンは従来通り有線で、そちらは単体ポータブルプレーヤー等と組み合わせる。そしてiPhoneと合わせる普段使いには、引退気味だった先代愛用イヤホンとこれを組み合わせる、といったような活用方法もありかもしれない。
このBluetoothリケーブルというジャンルはまだいくつかの製品が登場し始めたばかりで、そもそも今後ジャンルとして確立されてくるのかもわからない、まだこれからの分野だ。
はじめからBluetoothイヤホンとして開発すれば、Bluetoothでの音質変化も込みで全体をチューニングできるが、リケーブルタイプにその手法は使えないという不利はある。またレイテンシー、音の遅れが不可避なので、DJアプリや諸々の音楽制作アプリ、音ゲーアプリなど、リズムにシビアな用途には使えないというBluetooth共通の弱点もある。
しかしそれらはやむなしとして、現状でどれを選ぶかとなれば、このモデルはSony「SONY MUC-M2BT1」と並ぶ最有力だ。製品自体の完成度は十分に高く、現時点でのベストのひとつと言える。また、イヤーモニターのリーディングブランドのひとつであるWestoneがいち早くこれを仕掛けてきたという意義、今後の流れへの影響も大きいのではないかと思う。
「いますぐにでも試したい!」という方も「いまはまだ…」という方もチェックはしておくべき製品だ。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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