<山本敦のAV進化論 第111回>
Spotifyは無料でどこまで使える? 試してわかった「できること・できないこと」
だが当然ながら並び順の通りに送られるわけではなく、ここでもシャッフルされて次の曲へ飛ぶ。プレミアム版で使える、楽曲の任意のポイントを探して頭出しするサーチ機能は無料版の場合グレーアウトしていて使えなかった。
プレーヤー画面の左下にある「シャッフル再生」のアイコンボタンは常にグリーンに点灯してオンになっている。右側の1曲ループ再生のアイコンはタップしたらグリーンに点灯した。Spotifyが特徴としてうたう歌詞表示の機能は無料版にも用意されている。
楽曲再生中のシェア機能は、SNSへの投稿、友人へリンクのメール送信ともに無料版でも同じように使えた。まあ、Spotifyにしてみればできる限り多くのユーザーにサービスの魅力を伝えたいわけだから、シェア機能は使えて当たり前なのかもしれない。
プレイリストも全件が普通に選択して再生できるが、収録されている楽曲の再生順はシャッフルになる。プレイ中に気に入った曲を見つけたら、カバーアートの左舌にある「+」アイコンをタップしてMy Musicに保存しておけば、後から探す手間も省ける。ただしMy Music内の音楽再生も問答無用でシャッフルとなる。
プレミアム版と比べて圧倒的に不便な点は、端末に楽曲がダウンロードできないことだ。プレミアム版は3段階から選択できる音質も、無料版の場合は最大96kbpsの「標準音質」と、160kbpsの「高音質」、または自動選択までとなり、320kbpsの「最高音質」は選べない。Wi-Fiにつなげない外出先でLTEのパケット通信量を節約するには「標準音質」を選ぶのが賢明だ。
1つのアカウントで同時に音楽が聴ける端末は1台まで。同時に2台以上の端末でアプリを起動しようとすると、後から操作した端末に音楽再生の主導権を切り替えるか、そのまま現在音楽を聴いている端末での再生を続行するか、アラートが表示される仕様はプレミアム版と一緒だ。
■強制シャッフル再生も慣れれば快適に…?
筆者はSpotifyのスタート後、基本的にプレミアム版を利用していたので、今回本稿を執筆するために初めて無料版をじっくり使った。はじめは不便で仕方なく感じられたシャッフルプレイも、1週間以上にわたって洗礼を浴び続けてしまうと次第に慣れ、使い勝手も良く感じられるようになってしまったから不思議だ。
例えばシーンや音楽ジャンルごとにSpotifyがおすすめするオリジナルプレイリストは、もともと再生順がどうなろうと構わないので、BGM代わりに使うなら何の不自由もない。
好きなアーティストのアルバムの中には、普段は聴かずに飛ばしてしまう曲やそもそもほとんど聴いたことがない曲もある。そういう自分にとってのマイナー曲も半ば強制的にシャッフル再生されてしまうから、あらためて聴いてみたら「意外といいじゃん」と開眼するきっかけにもなった。これは嬉しい方の発見だ。
曲の間に入るCMも、試してみた限りでは15秒前後の短いものがほとんどなので、雰囲気を妨げられるような不快感もない。知らない楽曲がふと耳に飛び込んできて、気に入ったからそのミュージシャンの他の楽曲や参加作品を検索機能から探すという使い方も不自由なくできる。
一方で、LTE接続が使えないオンキヨーやパイオニアのAndroid搭載DAP、Wi-Fi専用のiPadなどでSpotifyを活用する場合は、楽曲のダウンロード機能がないため、外出時にとても不便だ。音楽ストリーミングサービスの入り口として使い勝手の良い無料版を用意し、フル機能への渇望を刺激してプレミアム版のユーザーを増やしていく、Spofityの戦略のうまさを感じた。
日本より先にSpotifyのサービスがスタートしている世界のいくつかの地域では、無料版でそこそこ満足できるユーザーが多いので、プレミアム版への移行に苦戦している場所もあると聞く。無料版とプレミアム版の両輪で、Spotifyのビジネスが日本にどのような形で根付くのか。日本の音楽ストリーミングサービスに与える影響も含めて、今後も注目していきたい。