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【特別企画】「HDRリマスター」も含めた画質の進化をチェック

山之内正が見たソニーの新旗艦ブラビア「Z9D」。4K HDR時代に登場した革新的技術「Backlight Master Drive」の効果とは?

公開日 2016/10/28 11:00 山之内 正
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この場面もたんに明部の輝度を引き上げるだけではフラットな調子になりがちで、輝きやコントラストへのこだわりが伝わりにくいのだが、Z9Dで見ると、短時間見ただけでも強い印象を与える説得力豊かな映像であることに誰もが気付くはずだ。

極限まで高密度化したLEDバックライトは、階調表現においても決定的な違いを生む。

《レヴェナント》冒頭、水が流れる斜面を進む場面では、水が濁らず、見渡すかぎりの遠くまで空気が澄んでいることに気付く。木肌の凹凸にかろうじて気付くほどの暗い場面なのだが、階調をなめらかに再現することで豊かな立体感を引き出し、細部の緻密なコントラスト描写によって水や樹木の質感をていねいに再現する。

この作品ではどの場面を見ても明暗の表現力に余裕があり、他の機種では気付きにくかったような暗闇の深さや、消えかかる炎の微妙な揺らぎまで浮かび上がってくることに驚かされた。

バックライトの振る舞いに不自然な部分があると、そこで微妙に集中力がそがれてしまうのだが、Z9Dの映像にはそうした不安がなく、じっくり集中し、安心して作品の世界に浸ることができる。画面上では僅かな違いかもしれないが、作品鑑賞のスタンスはその微妙な違いによって大きく変わる。

■SDR映像に対する「HDRリマスター」も目を見張る効果

HDRはまだスタートを切ったばかりで、十分な数のコンテンツが提供されているとはいえない状況だ。今後しばらくはSDRが映像コンテンツの中心を占めるわけだが、Z9Dシリーズはそうした用途を想定し、「HDRリマスター」という強力なツールを用意してきた。

X1 Extremeの演算能力を活かしたHDR相当へのアップコンバート機能なのだが、ここで注目すべきは、画面全体ではなくオブジェクトごとにコントラストカーブを設定して映像を追い込んでいることで、たとえば空に浮かぶ雲や、人物の衣服の部分だけを一つのオブジェクトとしてとらえ、そのなかの階調を確保したうえで、破綻なく輝度レンジの拡大を図るといったアプローチが可能になる。

HDRリマスターの適用イメージ

それを実現するためには、映像の検出精度を上げ、オブジェクトごとに適切な処理を行うことが不可欠だし、明暗だけでなく、被写体ごとに色の鮮やかさやテクスチャーを引き出す工夫も求められる。

その成果はデモ映像ではっきり認められるが、BDなど映画のSDR映像でも目を見張る効果を上げており、的を射たチューニングで画を追い込んでいることをうかがわせた。自然な遠近感を引き出すうえで、「Super Bit Mapping 4K HDR」によるビット拡張処理が確実な成果を上げていることも見逃せないポイントだ。

Super Bit Mapping 4K HDRの適用イメージ。夕焼け空のグラデーションなどがより滑らかに再現できている

Z9Dの画質を支えるバックライト マスタードライブは、液晶方式の弱点克服というレベルにとどまらず、テレビ全体の画質改善を次の段階に進める原動力となるものだ。

そして、4K HDR映像だけでなく、見慣れたSDRの映像からも思いがけず豊かな立体感を引き出すことなど、本機が見せる映像には良い意味で予想を裏切る発見がある。液晶テレビの映像表現にまだ改善の余地があったことを、ここまではっきりと気付かせてくれる製品と出会ったのは久しぶりのことだ。

4KとHDRによる映像表現の広がりはこれからが本番だが、「光の忠実な再現」というコンセプトにブレがないので、新たに登場する作品群でも説得力のある映像を見せてくれる違いない。

(特別企画 記事協力:ソニーマーケティング株式会社)

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