【特別企画】評論家・折原一也が製品をチェック
東芝の液晶テレビ「レグザ Z810X」が「実は最も狙い目」な理由とは? 画質傾向と技術背景に迫る!
Z810Xシリーズは、1,000nitを超える全面直下型LEDバックライトを採用。従来のレグザの培ってきた高画質の取り組みをすべて継承した上で、「AI機械学習HDR復元」という新機軸の高画質化技術を投入した。
この機能を考える上でポイントとなるのは、今般続々と発売されているUltraHD Blu-ray作品。これらには多くの場合、UltraHD Blu-ray版のディスクと、通常のBD版ディスクの両方が同梱されている。つまり、同じタイトルを、同じ制作者がHDR(UHD BD)とSDR(BD)でグレーディングしたものが一緒にパッケージされているのだ。
そこで今回の「AI機械学習HDR復元」では、同一シーンでのHDRとSDRとの輝度ヒストグラムを解析。SDRとHDRの表現の違いを変換テーブルのデータベースとして蓄積し、それを元にしてHDR変換をする仕組みだ。
なお、UltraHD Blu-ray版として発売されている作品を「あるだけ全部」(住吉氏)AI機械学習の対象としているとのこと。現時点では作品の多い映画をまず対象に分析しているという。
従来、HDR変換は各社のテレビ映像技術者のセンスで作られていたとも言える。だが、同一作品でUHD BDと通常BD版の両方が登場することで、制作者自身による“見本”が登場したわけだ。この“見本”をうまく活用して解析することで、よりHDR変換の精度を上げられるようになったのである。
また、この他、「熟成超解像」「ローカルコントラスト復元」「AI階層学習シーン解析高画質」など、注目の高画質技術も数多く搭載されている。
以上、高画質の裏側を取材していくと、本機「Z810Xシリーズ」はまさしく液晶テレビで高画質を追求してきたレグザの集大成と呼ぶべき存在だ。東芝は有機ELモデル「X910シリーズ」も同時発表しているが、本機を視聴するとやはり液晶テレビとしての蓄積の多さが活かされていると実感する。
さらに、画質だけでなく音質面も配慮。前面放射配置で高域を再現する「ノーメックスドームツィーター」や、耐入力の向上と低歪化を実現したというフルレンジスピーカーを、総合出力46Wのマルチアンプで駆動。さらに、サウンドイコライザーも中高域の補正バンド数を従来よりも大幅に増やした。
この中高域の補正バンド数は、従来の「レグザ サウンド イコライザー プロ」での120バンドから、213バンドへ増加。「レグザ サウンド イコライザー ファイン」と名付けられた同機能によって中高域の分解能を高め、さらに緻密な音を再現できるよう図ったという。
加えて、別売オプションの“レグザサウンドシステム”「RSS-AZ55」との連携も進化させてさらなる高音質化を実現。レグザ本体のスピーカーとレグザサウンドシステムを同時に鳴らす“シンクロモード”が進化した。
これまで、シンクロモードではレグザサウンドシステムとレグザ本体のトゥイーターから高域を再生していたが、今回、レグザサウンドシステムおよびレグザ本体のトゥイーター、さらにフルレンジスピーカーの高域成分を同時に再生するようになった。これにより、さらに広がりと奥行きのあるサウンドを実現したとしている。
なお、このレグザサウンドシステム、売上も非常に好調だとのこと。一般的なサウンドバーとは違いテレビの裏に隠して設置するというスタイルも独特で、デッドスペースであるテレビ裏を有効活用できるのも興味深い。
2017年は国内メーカーによる有機ELテレビ元年とも呼ばれ、ハイエンド志向の強いAVファンは4K有機ELモデル「X910シリーズ」に注目していることだろう。
だが実際のユースケースを考えると、液晶テレビとして最高画質を追求する4Kレグザ「Z810Xシリーズ」は、実は最も狙い目のモデルとなりそうだ。
(特別企画 協力:東芝映像ソリューション株式会社)