海上忍のラズパイ・オーディオ通信(27)
オーディオ再生に特化したラズパイ用ソフトウェア「Volumio」と「Moode audio」を比較する
WEBブラウザを利用してアクセスする管理画面(Web UI)は、その典型例といえるだろう。Volumioは前バージョン(v1.55)と比較すると設定項目が簡素化されており、わかりやすくなった反面、オプションが減っている。たとえばDLNAやUPnPのスイッチはWeb UIから取り除かれたため、オン/オフはCUIで(SSHでリモートログインしてコマンドラインで)変更するしかない。一方のMoode Audioは、DLNA/UPnPに加えてワイヤレス機能(Wi-Fi/Bluetooth)のスイッチも用意されるなど、設定項目は豊富だ。
Moode Audioの場合、オーディオ再生用にチューンナップされたカスタムカーネルに変更するオプションもWeb UIに用意されている。I2Sで接続するDACボードに対し、システム起動時に与えるパラメータもWeb UIで設定可能だ。以前のバージョンのVolumioには、カスタムカーネルに変更するオプションも用意されていたのだが、最新版のVolumio 2ではその導線が取り去られてしまった。
【Volumio 2とMoode Audio 3.1の比較】
比較項目 | Volumio 2 | Moode Audio 3.1 |
---|---|---|
ベース | Raspbian Jessie Lite | Raspbian Jessie Lite |
Linuxカーネル | v4.4.9-v7+ | v4.4.30-v7+ |
ALSAライブラリ | v1.0.28 | v1.0.28 |
MPD | v0.19.19 | v0.19.19 |
DSDネイティブ再生 | ○ | ○ |
DLNA | △ | ○ |
UPnP | △ | ○ |
SMB | ○ | ○ |
WebUI | JavaScript | PHP |
スマホアプリ | ○ | × |
WiFi HOTSPOT | ○ | ○ |
プラグイン機構 | ○ | × |
カスタムカーネルの選択 | × | ○ |
Volumioは、RaspiFiの派生プロジェクトとして始動した経緯があり(前述したRuneAudioも同根)、バージョン1.55の頃まではRaspiFiそのままの部分も多く残っていたが、Volumio 2ではWeb UIをJavaScriptベースに書き換えるなど大幅な見直しを行った。プラグイン機構 -- それほど複雑ではなくシェルスクリプトを実行しパッケージのインストール/アンインストールを行う程度 -- を追加し、Spotify(プレミアム)の再生を可能にするなど、オーディオ体験の幅を広げている。
iOS/Android OS対応のスマートフォンアプリを用意したことも、新しい取り組みだ。汎用的なMPDクライアントではなく(その証拠にMoode Audioなど他のディストリビューションのMPDは操作できない)、Volumio 2しかコントロールできないが、アルバムアートワークの自動取得に対応するなど“いまどきの”音楽プレーヤーとしての機能を持つ。システム設定はWeb UIに遷移して行う仕組みだが、選曲や再生指示は断然アプリのほうが快適だ。
しかし、個人的な感想を言えばMoode Audioに軍配が挙がる。NASに蓄えた音楽を再生する場合、(SMBで)NASをマウントするのではなくOpenHomeの方が扱いやすい。Raspberry PiをレンダラーとするコンセプトはDLNA(DMR)と同じだが、プレイリストを再生デバイス側で保有するためコントロールアプリの挙動は軽快で、ギャップレス再生にも対応する。
VolumioにもMPD用UPnPフロントエンド(upmpdcli)が収録されており、動作するものの(設定ファイルの「/etc/upmpdcli.conf」もある)なぜかWeb UI上にスイッチが見当たらず分かりにくい。折角の専用アプリもOpenHomeをサポートしないため、OpenHomeアプリ使用中は現在再生している曲が分からない状態になってしまう。
Raspberry Pi 3のワイヤレス機能をオン/オフできるなど、カスタマイズ性の高さもMoode Audioを推す理由だ。Volumioでも起動時に参照される設定ファイル(/boot/config.txt)を書き換えれば対応できるが、Web UIが用意されている方が良い。専用アプリは魅力だが、いろいろイジって“自分流に育てる”ことができる環境の方が長く付きあえるのではないだろうか。