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開発者インタビューも収録

マランツ「HD-AMP1」を聴く。最上位「PM-10」と並行して開発したDAC内蔵アンプ

公開日 2017/04/18 10:38 角田郁雄
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D/A変換に関わるところでは、32bit DACの最高峰と言われるESS社“SABRE32”シリーズの「ES9010K2M」を搭載する。このDACは電流出力タイプであるため、外付けのI/V(電流/電圧)変換回路が必要となる。本機ではI/V変換回路およびポストフィルターを、HDAMとHDAM-SA2を使用したディスクリート回路で構成している。

さらに自然な音の立ち上がりを再現するために、DACチップ内蔵のデジタルフィルターを使わず、同社オリジナルのデジタルフィルター「MMDF」を用いている。これは上位モデル「SA-11S3」や「NA-11S1」にも搭載されたもので、2種類のフィルターが選択できる。

フルサイズ級のアナログ・プリとHypexパワーアンプを備える

本機はパワー部はスイッチングアンプだが、プリ部はフルディスクリートのアナログアンプである。そしてデジタル入力もアナログ入力も、このプリアンプを通過する。特にアナログ入力は、HDAM-SA2のバッファー回路で低インピーダンス化され、ワイドレンジに増幅される。超高域まで優れたチャンネルセパレーションを示すHDAM-SA2を使った電流帰還型プリアンプは、チャンネルセパレーションの向上と優れた空間表現にも貢献する。この価格とは思えない高品位なサーキットボードと言える。

HD-AMP1の内部。スイッチングパワーアンプモジュールやフルディスクリート構造のプリアンプ回路のほか、クロックやコンデンサーなど細部まで厳選されたパーツとマランツのノウハウを搭載している

プリアンプの出力は、パワーアンプへと入力される。パワーアンプにはHypex社のスイッチングアンプ・モジュール「UcD」を採用する。このスイッチングアンプは、スピーカーのインピーダンスの変化に関わらず、各帯域で再生周波数特性が変化せず、しかも優れた歪み特性を備えている。また一般的なクラスD増幅素子とは異なり、アナログ回路をフロントに配置して、最終増幅段のみでスイッチング・ドライブする仕組みになっている。ほとんどアナログ回路で支配されていると言ってよいだろう。

本機のような構成では、前段のプリアンプの品位が、豊かな倍音と俊敏な音の立ち上がりのカギとなる。また、当然ながらスイッチングアンプなので、一般的なA/B級アンプと比べると電力損失が少なく高効率である。

真空管アンプのような美しい倍音。アナログ入力のクオリティにも驚く

試聴ではまず同社のSACDプレーヤー「SA-14S1」、B&Wの2ウェイ・スピーカー「CM6 S2」を使用して、アナログ入力の音を試した。全般的な音質としては、半導体のA級アンプというよりは、前述のように直熱真空管300Bを使ったアンプのような、柔らかく透明度の高い倍音を放つことが特徴だ。そして、マランツの求める空間性と音楽に追従する俊敏な立ち上がりを示してくれる。

まずはB&W「CM6 S2」と組み合わせて試聴

まず、SACD再生である。イザベル・ファウストによるブラームスのヴァイオリンソナタを再生したが、ヴァイオリンの響きは柔らかで実に豊潤。ピアノは響板の響きが豊かで、高い音階において明瞭度に優れた輝きを示してくれる。また解像度が高いので、奏者のちょっとした身動きも捉え、広く、深い空間にリアルに演奏の様子を描きだす。ピアニシモの弱音も消え入る間際まで美しい。このあたりには特に、アナログ入力の質を高めたプリアンプの効果が発揮されている。CM6 S2との組み合わせも良好で、その特徴であるスピーカーの背後に深いステージ再現を引き出してくれる。

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