さまざまな音を持つ「万能アンプ」
どんな環境でも効果を発揮 ― 進化したiFIオーディオ「iTube 2」、そのサウンドとは?
鮮烈な音から「遊び心」まで。驚異的に幅広い再現性
まずは音元出版の試聴室でプリアンプとして使用してみた。スピーカーはあえて小型のブックシェルフ型機であるクリプトンのKX‐5Pを用いている。
鮮烈な音である。ハイスピードで透明度が極めて高く、素直でけれん味がない。音場の広さはハイエンド機と同等で、聴感上のS/Nが極めて高く、しかもエネルギー感が超高級真空管式プリアンプに迫るほど強い。強いて不満な点を挙げるとすれば、個人的な好みから低音がもう少し欲しいことくらいだが、これはブックシェルフ型スピーカーの宿命のようなものだ。しかしながら本機には「X BASS+」というスイッチがある。これはオフ/6dB/12 dBが選べるのだが、今回の試聴では6dBのポジションにすると満足のいく低音が得られた。
余勢を駆って他のスイッチによる効果も試してみた。「3Dホログラフィック+」はオフ/30度/30+の3ポジションがあるが、今回は30度というポジションで再現されるスケール感が最も好感触だった。「真空管マジック」はSET/オフ/Push-Pullの3ポジションだ。
取説によると、SETでは三極管シングルのパワーアンプのような音に、オフでは古典的なプロ用真空管式スタジオ機材のような音に、Push-Pullでは多極管プッシュプル機のような音に、それぞれなるという。なるほどSETの音は三極管のアンプのように清純だ。オフの音はそれよりもかなり力強い。Push-Pullの音にはゴージャスさがある。個人的にはPush-Pullが好みだ。
以上のような調整を施した結果、当初の「X BASS+」=オフ/「3Dホログラフィック+」=オフ/「真空管マジック」=SETで得られていた鮮烈でけれん味のない音は、遊び心に満ち満ちたダイナミックなサウンドに変身した。ジャズは、こんな音がKX‐5Pから出るのか、とも思わざるを得ないほどファンキーな聴き味だ。ヴォーカルはスーパーリアリズム調で、歌手の気配感が強い。クラシックはこの小さなプリアンプのどこにそんな力が潜んでいるのかと訝るほどスケールの大きな表現が得られた。
実をいうと、私は初代機を自宅で、同社のmicro iDSDのアナログ出力を補強するためのバッファーアンプとして使っている。これとiTube2を聴き比べてみた。
全く勝負にならない、というのが偽らざる感想だ。聴感上のS/Nはもちろんのこと、微細なダイナミクス変化への反応や、音色感などが桁違いに良好になっている。本機が最も効果を発揮するのがいわゆるスーパーハイレゾ音源。DSD11・2MHzのソロ・ジャズピアノを聴いたのだが、奏者がピアノを介して心情を表現するさまがダイレクトに伝わってくる。
iTube2は、さまざまな使い方ができる、便利で素晴らしく音の良いプリアンプ/バッファアンプである。