1台でステレオサウンドも楽しめる
カジュアル&高画質に100インチ。BenQ短焦点ホームシアタープロジェクター「HT2150ST」レビュー
●カジュアルなだけではなく映像を追い込める本格仕様
HT2150STの映像はBlu-rayディスクの作品で確かめた。はじめに2016年版『ゴーストバスターズ』から観てみよう。序盤のチャプター2、研究所で主人公のエリンとアビーが再会する昼間の明るいシーンからチェックした。本機が搭載するピクチャーモードは「ブライト/ビビッド/シネマ/ゲーム/ゲーム(ブライト)」の5種プリセットのほか、ユーザーがカスタマイズした設定値が保存できる。
このシーンでは「ビビッド」に設定したところ、肌色が最も自然で血色も活き活きとして見える。作品のテーマカラーのひとつであるオレンジ色も鮮やかだ。このシーンの舞台となる研究室は役者の背景に実験装置など細々とした被写体がひしめき合っているが、カメラワークによる立体感もシャープに描かれた。
続いて同じ作品のチャプター14、ニューヨークの街に現れた大量のゴーストたちとバスターズの対決シーンに飛んでみる。夜の闇の中で暴れ回るゴーストたちのきらめき感、バスターズの武器であるプロトンパックのレーザービームの色鮮やかさなどをチェックした。
このシーンも本機で観るとやはり映像モードは「ビビッド」がしっくりときた。暗部に含まれる情報も適度に描きつつ、何よりレーザービームの色鮮やかさが気持ちいい。あるいは「ゲーム」も明暗部のディティールがはっきりと描かれるようになって見応えがあった。反対に「シネマ」で観ると暗部が強調されてしまい、本作とあまり相性が良くないように感じられた。
もうひとつBlu-rayディスクの作品から『007 カジノロワイヤル』を視聴してみた。チャプター14、ジェームズ・ボンドとル・シッフルがポーカーで対決するシーンだ。今度はユーザーモードで「輝度」「コントラスト」、そして「色」のバランスなどを調整してみた。細部の項目を追い込んでいくと、ポーカーテーブルに並ぶ役者たちがそれぞれ身につけている衣装のテクスチャーもはっきりとわかるようになってきた。
映像モードを「ビビッド」にしてしまうと肌色が少し元気になりすぎて本作の雰囲気に合わない感じもするが、ユーザーモードで色とコントラストのバランスを整えて行くと肌色の透明感が増して、輪郭の精彩感も引き締まってくる。さらにノイズリダクション効果の増減を調節していけば平坦部の質感もほどよく整えることができる。
カジュアルに楽しみたい作品はプリセットの映像モードでざっくりと最適な設定が選べるし、もっと作品の世界観に深く浸りたい場合にはユーザーモードでとことん映像を追い込める。本格志向のユーザーにも納得の高いパフォーマンスを備えたスタンダードモデルと言えそうだ。
そして本体内蔵スピーカーによるパワフルなサウンドにも驚かされた。本体後方の左右側面にスピーカーの開口部がレイアウトされている。視聴室は10〜12畳前後の空間だが、ボリュームの設定を4割ぐらいのポジションにすれば部屋に響き渡る十分な音量が得られた。疑似サラウンドのような音響効果は搭載していないが、本体設定からサウンドの方もわりと細かく追い込める。
プリセットは「標準/ゲーム/シネマ/スポーツ/音楽」の5種類。“007”のように迫力たっぷりの効果音を収録した作品には「シネマ」や「スポーツ」がよくはまった。ユーザーが好みのバランスに設定した値も保存できる。
もし自宅にWi-Fi環境をお持ちなら、本機の背面にあるHDMI端子にアマゾンの「Fire TV Stick」やグーグルの「Chromecast」など、HDMI直結タイプのストリーミング端末をつないで、Amazonプライム・ビデオやNetflix、YouTubeなどVODコンテンツをカジュアルに大画面で楽しんでもいいと思う。短焦点投射に対応したポータビリティの高いホームシアター用プロジェクターとして本領が発揮されることうけあいだ。
または片側のHDMI端子がMHL機能に対応しているので、同じMHL対応のスマホやタブレットをケーブルでつなげば、モバイル端末で撮影した写真や動画などを大画面に映して家族や友だちとシェアしながら楽しい時間を過ごせる。
今回ピックアップしたBenQのHT2150STは、そのシンプルにまとめられた操作性やカジュアルなデザインだけにフォーカスすると、ファミリー向けのエントリーモデルという印象を持ってしまうかもしれないが、その映像や音のクオリティを体験すると、一切妥協のない本格派プロジェクターであることを実感できると思う。
ユーザーに開放された詳細設定からシアター体験を思いのままにカスタマイズができるので、購入後にもずっと楽しみが続くはず。いま最も勢いに乗るプロジェクターブランドのひとつであるBenQの柔軟さと豊富なノウハウの蓄積を感じさせるベストインクラスのプロジェクターだ。
コンパクトなスペースで100インチを実現できる短焦点と、ハイパワースピーカーと画質の追い込みによる良質な画音一体を兼ね備える本機は、これからホームシアターを持ちたい方、あるいはセカンドシアターの増設を計画している方にもぜひおすすめしたい。
(山本 敦)