【特別企画】いま買える超絶フラグシップ機
594万円の超弩級ヘッドホン、HIFIMAN「SHANGRI-LA」受注開始! 小原由夫が実力チェック
このアンプがユニークなのは、そのデザインだけではない。管球アンプで一般的な出力トランスが搭載されていないのだ。
もっともそれは、スピーカーを駆動するのではなく、専用設計されたヘッドホンをドライブするのだから不思議ではないかもしれない。しかし設計者のドクター・ファンは、よりワイドレンジに仕上げるためにトランスフォーマー・レスを選択したのだという。この辺りに音質に対するこだわりが秘められていそうだ。
SHANGRI-LAのヘッドホン本体のデザインは、同社の高級機HE-1000のそれを踏襲している。すなわち楕円型のイヤーカップに横スリットの開放型ハウジング、メタル製ヘッドバンドと革製アジャスターの組み合わせだ。
ドライバーは、同社としてはお馴染みのナノ粒子コーティングによる厚さ1ミクロン以下の極薄振動板を用いた、平面磁界/全面駆動の静電型である。
金属メッシュの電極がこの振動板に近接配置されており、そのフレームは特殊な合金製で、50ミクロンという極細の格子状になっている。実に7Hz〜120kHzという驚異的な周波数特性を実現しているのが凄い。カラーリングはブラックで、ハウジングの側面は木調だ。ちなみに本機は受注生産である。
■高級ヘッドホンとしても希有な表現力
試聴に当たっては、MacBookを用意し、スイスのWEISS(ワイス)社のD/AコンバーターMEDUSを使用(いずれも同社の日本法人が準備したもの)。
SHANGRI-LAのヘッドホン本体は、見た目から受ける大柄な印象に比して、ずっと軽量で、装着感はすこぶる良好。側圧もさほど強くはなく、フィット感はとても良好だ。ケーブルはやや太めの平行コードで、メッシュで編まれている。
一聴して感じるのは、オープン型ならではの開放感と、それに伴う立体的なステレオイメージの再現だ。
ジャニーヌ・ヤンセンのヴァイオリン、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団とアントニオ・パッパーノ指揮による「ブラームス/ヴァイオリン協奏曲」を聴いてみたところ、この優雅でスケール感豊かな楽曲が奥行き感を伴って雄大に再現され、しばし聴き入った。