[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第191回】高級ダイナミック型イヤホンに良作多数! ベイヤー/DITA/Campfireの3機種で実力を測る
この方式、ケーブル自体を付け替えてシングルエンドとバランスを使い分けるのに対して、「付け外しする部分が左右二箇所ではなく根元の一箇所で済む」「リケーブル端子よりも頑丈なので付け外しを繰り返しても壊れにくそう」といった利点がありそうだ。
■VEGAのポイント!
Campfire Audio「VEGA」の特に大きな特徴は、「ADLC(アモルファス・ダイヤモンド・ライク・カーボン)」コーティング振動板、そして「リキッドメタル」ハウジングだ。
「アモルファス・ダイヤモンド・ライク・カーボン」とは、ダイヤモンドに近い非結晶構造を持った炭素膜のこと。ダイヤに近い硬度を備えるそのコーティングによって、音の伝播速度の速さなど振動板素材に求められる特性を高めている。
ハウジングの「リキッドメタル」という素材については、説明しようとすると長くなるのだが、「チタンより頑強な上にガラスの表面のような硬度で傷もつきにくい」点と、音響特性の面からも外観の美しさの面からもイヤホンのハウジングに適した素材である、というところを押さえておけば良いだろう。
■音の個性は?ベストフィットソングは?
それぞれのサウンドについてだが、まず全モデルを通しての印象として、BAドライバー搭載型と比較して高域側のジャキッとした鋭さ、振動板面積の余裕から生まれるのであろう自然な深みのある低域という下地においては、やはりある程度共通するものはある。多ドライバー化という無理を重ねてワイドレンジ化を推し進めてきたBAマルチに対して、ハイエンドダイナミック型は「ナチュラルボーンワイドレンジ」な感じだ。
しかし下地は共通でもそこからのチューニングが異なる。そしてそのチューニングの基本は、どの帯域のドライバーを増やすかという足し算のBAマルチとは逆の、どの帯域を抑えるかという「引き算のチューニング」なのではないだろうか。XELENTOは高域、Dreamは高域も低域も、引き算によって意図した音にまとめている印象が特に強い。比べるとVEGAはドライバーの特性をより大胆に生かした印象、といった違いを感じた。
上述の話を前提にしつつ、それぞれのモデルについて特にフィットした曲を挙げながらその特徴を述べていこう。
次ページXELENTOは高域の整え方が見事。Dreamは低域の「半歩引いた存在感」が魅力