近日発売の注目機の「全て」を解説
エキサイティングなエナジャイザー(1) ― iFI Audio「Pro iESL」テクニカルノート
■トランス − それはエナジャイザーの「サウンド」
自動車の優れたシャーシと同じように、エナジャイザーの品質を決定づけるのはトランスです。これは基本的なことです。エナジャイザーの「サウンド」はほぼすべてトランスによって決まるという単純な理由です。理想を言えば、トランスは独自の「サウンド」を持たず、ただ単に透明にオーディオ信号を伝達すれば良いのですが、現実にはこれは難しい任務となります。
トランスは2つの部分でできていますが、Pro iESLではそのどちらもが、「金にいとめをつけない」時代のアルテックやウェスタン・エレクトリックの銘品の設計、素材、職人仕事以上の水準で作られています。
1950年代〜1960年代のステレオの黄金時代以降、素晴らしいオーディオ用トランスの製造技術は、真空管の人気が落ちると共に、大部分が失われてしまいました。AMR/iFI-Audioでは、この奥義的知識を保持し、21世紀にも持続させたいと願っています。まずAMRのトランスから開始して、次に私たちはRetro Stereo 50の出力トランスを手がけました。そしていま、Pro iESLの「PPCT」(ピンストライプ・パーマロイ・コア・トランス)へと至ったのです。
こういったトランスを製作するためには、必要とされる素材を探し、手巻きトランス(ほとんど失われてしまった技術ですが、絶対に苦労する価値があるものです)という、古典的な、過去の方法を実施しなければなりませんでした。
■コア(芯材) ― それは「音」
Pro iESLのトランスのコアは、ミューメタル(別名パーマロイ)の薄板と方向性電磁鋼板(粒子配向ケイ素鋼、別名GOSS)をミックスした素材を使用しています。高電圧に高水準で対応できるオーディオ用トランスの大半は、使用できる素材をスチールだけに制限しています(参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Electrical_steel#Grain_orientation)
・GOSSの長所:高信号レベルに対応しています。300Vあるいはそれ以上の電圧を生み出したい場合には、これが必要です。
・GOSSの短所:低レベルでのヒステリシスに問題があります。低レベルでの細部の情報が失われるのです。場合によっては、こうして音楽信号を「単純化する」ことによってかえって望ましい効果が得られることはありますが、歪みがはっきりと聴き取れます。
ミューメタル(パーマロイ)は、GOSSとは大きく異なる特性を持った、独特な磁気アロイです。(参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Mu-metal)
・ミューメタル(パーマロイ)の長所:低信号レベル(低レベルの解像度)に素晴らしい性能を示します。ただし、高レベルの信号には上手く対応できません。ミューメタル・ベースのトランスはクリスタルのようにクリアなサウンドでよく知られていますが、全般に高レベルの信号(数100Vではなく数1000V)には対応しきれないので、たいていはマイク用プリアンプやLPレコード用のMCピックアップに限定して用いられています。
・ミューメタル(パーマロイ)の短所:磁力特性を回復するために加工(例えば切断)した後は、発熱を処理する必要があります。この素材はGOSSよりもはるかに高価なので、供給に限りがあり、しかも供給はますます縮小される傾向にあります。既存のメーカーが閉店したり、他社に吸収されたりして、利益率が悪くなり、製造量が落ち込んでいるのです。
これら2つの素材を細かいピンストライプに(細い縦縞になるような形に)組み合わせる方法は、1950年代にアメリカのピアレス・トランスフォーマーが開発したものですが、これによって両素材から最高の能力を引き出すことができます。ピアレスのトランスは、ステレオの黄金時代の伝説的なウェスタン・エレクトリックやアルテック(Altecは「All Technical Services」の略)の録音装置に使われていました。
GOSSとミューメタル(パーマロイ)をまったく同一の薄板に仕上げるのは、大きなチャレンジとなりました。私たちが使いたいと思う薄板は超薄なので、ますます難しくなります。そして次に、異なった素材を使って、ひとつひとつのコアを手作業で、個別に組み立てていかなければなりません。根気の要るやっかいな仕事? そのとおりですが、でもやる価値はあります。
自動車の優れたシャーシと同じように、エナジャイザーの品質を決定づけるのはトランスです。これは基本的なことです。エナジャイザーの「サウンド」はほぼすべてトランスによって決まるという単純な理由です。理想を言えば、トランスは独自の「サウンド」を持たず、ただ単に透明にオーディオ信号を伝達すれば良いのですが、現実にはこれは難しい任務となります。
トランスは2つの部分でできていますが、Pro iESLではそのどちらもが、「金にいとめをつけない」時代のアルテックやウェスタン・エレクトリックの銘品の設計、素材、職人仕事以上の水準で作られています。
1950年代〜1960年代のステレオの黄金時代以降、素晴らしいオーディオ用トランスの製造技術は、真空管の人気が落ちると共に、大部分が失われてしまいました。AMR/iFI-Audioでは、この奥義的知識を保持し、21世紀にも持続させたいと願っています。まずAMRのトランスから開始して、次に私たちはRetro Stereo 50の出力トランスを手がけました。そしていま、Pro iESLの「PPCT」(ピンストライプ・パーマロイ・コア・トランス)へと至ったのです。
こういったトランスを製作するためには、必要とされる素材を探し、手巻きトランス(ほとんど失われてしまった技術ですが、絶対に苦労する価値があるものです)という、古典的な、過去の方法を実施しなければなりませんでした。
■コア(芯材) ― それは「音」
Pro iESLのトランスのコアは、ミューメタル(別名パーマロイ)の薄板と方向性電磁鋼板(粒子配向ケイ素鋼、別名GOSS)をミックスした素材を使用しています。高電圧に高水準で対応できるオーディオ用トランスの大半は、使用できる素材をスチールだけに制限しています(参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Electrical_steel#Grain_orientation)
・GOSSの長所:高信号レベルに対応しています。300Vあるいはそれ以上の電圧を生み出したい場合には、これが必要です。
・GOSSの短所:低レベルでのヒステリシスに問題があります。低レベルでの細部の情報が失われるのです。場合によっては、こうして音楽信号を「単純化する」ことによってかえって望ましい効果が得られることはありますが、歪みがはっきりと聴き取れます。
ミューメタル(パーマロイ)は、GOSSとは大きく異なる特性を持った、独特な磁気アロイです。(参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Mu-metal)
・ミューメタル(パーマロイ)の長所:低信号レベル(低レベルの解像度)に素晴らしい性能を示します。ただし、高レベルの信号には上手く対応できません。ミューメタル・ベースのトランスはクリスタルのようにクリアなサウンドでよく知られていますが、全般に高レベルの信号(数100Vではなく数1000V)には対応しきれないので、たいていはマイク用プリアンプやLPレコード用のMCピックアップに限定して用いられています。
・ミューメタル(パーマロイ)の短所:磁力特性を回復するために加工(例えば切断)した後は、発熱を処理する必要があります。この素材はGOSSよりもはるかに高価なので、供給に限りがあり、しかも供給はますます縮小される傾向にあります。既存のメーカーが閉店したり、他社に吸収されたりして、利益率が悪くなり、製造量が落ち込んでいるのです。
これら2つの素材を細かいピンストライプに(細い縦縞になるような形に)組み合わせる方法は、1950年代にアメリカのピアレス・トランスフォーマーが開発したものですが、これによって両素材から最高の能力を引き出すことができます。ピアレスのトランスは、ステレオの黄金時代の伝説的なウェスタン・エレクトリックやアルテック(Altecは「All Technical Services」の略)の録音装置に使われていました。
GOSSとミューメタル(パーマロイ)をまったく同一の薄板に仕上げるのは、大きなチャレンジとなりました。私たちが使いたいと思う薄板は超薄なので、ますます難しくなります。そして次に、異なった素材を使って、ひとつひとつのコアを手作業で、個別に組み立てていかなければなりません。根気の要るやっかいな仕事? そのとおりですが、でもやる価値はあります。