本日発売! 768 PCM/11.2MHz DSDだけではない魅力
「現代最先端の音」。RME 20周年記念「ADI-2 Pro Anniversary Edition」最速レポート
■まさしくニュートラルなサウンド。正三角形のエネルギーバランス
音を出してすぐに分かるのは、精巧さとワイドレンジだ。胸のすくようなハイデフィニッションサウンドが、現代最先端の音というイメージを抱かせる。
偏った感じが一切ないのもADI-2 Pro Anniversary Editionの魅力。濃厚でも淡泊でもなく、力強さを示したかと思うと、非常に繊細なデリカシー溢れる表現もする。これらは言わば、元のソースが持っているトーンやニュアンスを忠実に再現している証だろう。まさしくニュートラルなサウンドで、周波数帯域の偏りももちろんなく、正三角形のエネルギーバランスだ。最低域から最高域まで音の肌理が揃っていることを特筆しておきたい。
『井筒香奈江/リンデンバウムより』の192kHz/32bitから「氷の世界」を再生すると、生々しい音像フォルムがスピーカー間に浮かび上がった。それはホログラム的な実体感でこちらに迫り出し、ベース、ピアノによる伴奏との距離感も明快に感じ取れる。
96kHz/24bitの愛聴盤『上原ひろみ/SPARK』からの「ジレンマ」では、ベースのピッチが極めて克明に聴こえたことに感激。ピアノの質感は瑞々しく、ドラムの大きなフロアタムは、まるで等身大のような重々しい響きを轟かせて微動だにしない。
スタンダード仕様のADI-2 Proを実際に録音現場に持ち込んで製作されたという『結城アイラ/うた』は、現在望み得る最高スペックの768kHz/32bit音源。7月19日発売の季刊『ネットオーディオ』誌の付録のものを試聴した。チャーミングな声がスタジオのナチュラルなプレゼンスの中に浮かび上がるさまには、正直、鳥肌が立った。製作背景に関しては、ネットオーディオ誌の該当ページを参照いただきたいが、ピアノとアコースティックギターの伴奏を背にしたそれは、まるで自分がスタジオに居合わせて場を共有し、間近で聴いているような錯覚を味わわせてくれる。
11.2MHzのDSD音源「Ryu Miho/ミスティ」も、そのウィスパーヴォイスに耳がこそばゆい。ピアノは滑らかな質感で、ハスキーな声との濃密な絡み合いによってゆっくりと時間が流れているような印象。
最後に本機のヘッドフォンアンプとしての実力を確認すべく、デノン「AH-D7200」を接続してみると、広い周波数レンジ感とナチュラルなトーンが実感できた。声や楽器の質感再現にこれみよがしなところが一切なく、あくまで自然体の音だ。
インピーダンス600ΩのAKG「K240 Monitor」との組み合わせでは、本機の「Hi Power」モードの恩恵が実感できた。低インピーダンスを物ともせず、グイグイとドライヴする感じが分かる。とにかく音が力強く、ひ弱さが微塵もないのである。
ADI-2 Pro Anniversary Editionに接して思い浮かぶのは、『山椒は小粒でピリリと辛い』という諺。本機はまさにそれを体現する、コンパクトだけれどもビッグなアイテムである。