「ColorSpark」技術がDMDデバイスを活かす
LED光源がもたらす新次元の明るさ。4K DLPホームシアタープロジェクター「HT9050」レビュー
■純高解像度な映像を長寿命で楽しめる
まず目に飛び込んで来るのは、キレの良さが印象的な純高解像度映像。1つのDMDデバイスを用いるので、パネルアライメントという概念が存在しない。言い換えると、時間分割でモノカラー映像を重畳してカラーを表現するので、原理的上、ピクセル単位で色の滲みが生じないのだ。
こうした特徴は、単板式DLPの宿命と言えるカラーブレーキングと裏腹な関係ではあるが、OSD(On Screen Display)を表示しても白部分のエッジに色が乗らないのは明白で、引いては、自然画の解像度をスポイルしないのも事実だ。
さらに、動画再生時のパネル応答も桁違いで残像が少なく、動画解像度はさらに有利な部分もある。4Kによる高精細化が正義であるならば、本機の解像度面での実力は大いに評価するべきだろう。
筆者がリファレンスの1つとしているUHD BDソフト『4K夜景』は、山頂から暗い街を見下ろすシーンで、街の灯が点々と灯る様が印象的だが、本機の場合、ミラーが滲みなくクリアに描き出すことで光源が輝きを増し、高いコントラストを生む。カメラが街並みを舐めるようにゆっくりとパンしてもそのキレ味は変わらず、コントラストの高さが維持されるのに加え、画のテイストに変化がないのも好感が持てる。
高画質で定評のあるUHD BD映画『ハドソン川の奇跡』は、チャプター5での夜のタイムズスクエアにひしめき輝くLEDサイネージは、眩いばかりにパワフル。アメリカ国旗の赤色が、より鮮烈に心に投影される。色域がDCI-P3であることも本機の特徴だが、国旗の赤色は誇張されることなく、ほど良く拡張される印象で、画作りの巧みも特筆に値する。
同作品では、暗部が少し明るく浮き気味に感じたが、これは出荷時のガンマ設定が2.2であったため。暗室で平均輝度の高くない映画作品を中心に鑑賞するなら、デジタルシネマ相当の2.4に設定を変更すると良いだろう。ちなみにガンマは0.1ポイント刻みで調整が可能で、マニアユーザーのシビアな要望にも応えてくれるはずだ。
平均輝度の高い映像は、定番とも言える『宮古島』で確認した。抜けるような空の青、透明感を湛える海のエメラルドグリーンをリアルな質感で描き出す。そもそも濁りを感じないピュアな発色はDLPの得意とするところだが、本機では点光源に近く散漫にならないColorSparkの恩恵か、信号に込められたピュアな色を補正なく引き出すような、ストレスの無さが心地良い。肉眼で風景を目の当たりにしたかのように、網膜を通り超えて心までストレートかつ快く届くようだ。
もちろん、映像の明るさもスペックの2,200ルーメンが示す通り、HT8050と同等にパワフル。LED光源でありながら、リビング程度の照明が残る環境でも、明るく高コントラストで、色鮮やかな映像美が堪能できた。
ほか、ブルーレイ(2K)のアップコンバート画質も優秀で、シャープさを高めつつ、シュートのような不具合を感じないのも刮目。アルゴリズムの勝利か、あるいは、DLPならではの動画解像度の高さとの相乗効果か、画の重みは同じではなくなるが、2K映像も4K映像と違和感なく楽しめる。
光源の寿命、点灯から映像が安定すまでの素早さ、そしてコストなどを考えると、今後、プロジェクターの光源はLEDが主流になるだろう。本機の登場により、映像の明るさ、色鮮やかさが証明され、シネマプロジェクターとしての将来も明るく開けた。
世界を相手にするBenQの画作りは、奇をてらわない本格派で、AVマニアや映画ファンの審美眼に適うもの。4K高精細映像時代を迎え、真の高解像度を考えるなら、本機は大変興味深い候補となるだろう。
(鴻池賢三)