「コンパクトな外観からは想像できない」
ティエンのアナログプレーヤー「TT3」 − 合理性を突き詰め実現したサウンドを聴く
■カートリッジの性能を発揮するための理にかなった構造
微細振動を低減するアクリル製のアームサポートには、トーンアームのViroaが搭載されている。このアームで注目すべきは、トラッキング性能だけではなく、カートリッジの磁場を最良に保つことに焦点が向けられていることだ。
その特徴のひとつは、マグネット・ダンピング機構である。シングルポイント支持であるが、アームの回転部にはマグネットを使用し、適正針圧と水平調整により、アーム軸受けのベアリングを引きつけるように滑らかに回転させている。また、マグネット・アンチスケーティング機構により、レコードの外周から内周へ最適なアンチスケーティング量が加わる仕組みとなっている。
アームは振動を低減するカーボンファイバー製で、カウンターウェイトを低くオフセットしていることも特徴である。こうして細部を観察すると、いかにレコードから最大限の情報を得ようとしているかが理解できる。また、スタティックバランス型でありながらも、少し反りのあるレコードを再生しても、常に適正針圧を加えるダイナミック型アームに近い特性を備えていることが見てとれる。
■大型プレーヤー並みのダイナミックレンジの広さ
このプレーヤーは、冒頭にも記したように、このスタイリッシュでコンパクトなデザインからは想像すらしない、透明度の高い広大なステージが大きな特徴である。カートリッジに使用した青龍では、マリア・カラスの熱唱を歪み感皆無でディテール深く再現し、きめ細かで膨らみのある弦楽の響きを再現した。中低域に厚みのあるピラミッドバランスで、その音は実にダイナミックである。
レスピーギの『シバの女王組曲』では、本機の技術が生かされ、大型プレーヤー並みのダイナミックレンジの広い音を示し、オケの各パートの配置などもよく再現される。TT3は、大型プレーヤーを好まず、スタイリッシュなデザインとハイエンドな音質を極めたい愛好家にとって、注目すべきアナログプレーヤー・システムとなる。ぜひ、一度この音に触れて欲しいと思うところである。
■開発者、ジェフ・ティエン氏は語る
ティエンオーディオは、もともとはターンテーブルの修理やメンテナンスを行う会社としてスタートいたしました。これまで銘機と呼ばれるものも含めて、私はさまざまなターンテーブルに触れる機会があり、その優れた点はもちろん「もっとこうすれば」ということも見えてきました。
TT3はそんな世界中のターンテーブルを研究した結果として登場しています。ターンテーブルはいかに静かに、かつ正確に回転させるかを考え、DSPを用いた回転制御による3つのモーターを採用し、一方のトーンアームは音溝だけではなく、カートリッジの性能を最大限に発揮させることにも着目しました。一点個性的に見えるTT3の構造の全ては、合理性を突き詰めた上のものです。これらの結果として、ハイエンドの音を現実的な価格帯で実現したこと。これがTT3の最大の魅力だと自負しております。