[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第197回】懐かしの“学校机”「コクヨ 教育施設用生徒用デスク」で構築! 「最小限」デスクトップオーディオ
すると、センター定位の不明瞭さは相当なレベルで改善!スピーカーの真後ろの音、バスレフポートからの低音などは依然として斜めに壁に当たっているのでそこでの乱れはありそうだが、音を聴いて明確に気になるほどではない。
総合的に「コーナー配置で得られる奥行き感>コーナー配置で損なわれる要素」と利点が上回るところには落とし込めた。これは良しとできる。
ちなみに今回僕はこの部分にパイン集成材を適当なサイズにカットしてもらったものを利用。
しかしパイン材を選んだのは「その響きにフェンダーアンプで慣れ親しんでいる」「集成材なら大きめサイズも手に入れやすい」「お値段もお手頃」といっただけの理由。もしもこちらを参考にこの手法を実践する方がいらしてくれた場合、他の木材の響きが好きだったり予算に余裕があったりするならお好みの木材を選んほしい。
木材でなくても機能的には大丈夫だろうが、響きの自然さという点で木材が無難だろう。パイン材はやはり少し軽やかで明るい響きの印象だ。
さて。このやり方でどうやらいけそうという感触を得たのでここの仕上げに入る。
実際に気になったわけではないが、板の背面と壁面の隙間には嫌な響きが生まれてしまう恐れはある。何かしらの処理はしておくべきだろう。今回はタオル吸音、音を抜く隙間の確保での響きの低減をしておいた。
これでスピーカーのアコースティックチューニングもひとまず完了だ。最後におまけに利便性をもうひとつ付け加えて……
ということで「学校机に構築する最小限デスクトップオーディオ」完成!
今回スピーカー再生での奥行き表現を深めることに特にこだわったのは、それこそがヘッドホン/イヤホン再生に対して、スピーカー再生ならではの明確な魅力だと思うからだ。
またデスクトップオーディオでのスピーカー再生は、本格オーディオと比べれば「所詮箱庭」かもしれない。しかし庭いじりにも盆栽いじりにもそれぞれの趣があるように、デスクトップという制限の中でスピーカー再生らしさ、音楽の豊かな空間性をいかに生み出すか表現するかというのも、趣味としては十分に面白い。
ヘッドホンやイヤホンがメインのユーザーの方、本格システムをすでに組んでいる方に、その面白さの一端でも伝えることができたなら嬉しいのだが。
そして今回「スピーカー再生での空間表現」を求めていくということで、その空間表現が特に豊かな音源による試聴が必須だった。参考までに、僕が今回頼らせてもらった以下の二曲を紹介して記事の終わりとさせていただこうと思う。では……
悠木碧さん「レゼトワール Music Video (short ver.)」
『5.1chサラウンドにミックスダウンした音を5.1chスピーカー再生、それをダミーヘッドマイクで集音してステレオにミックスダウンしたという変態手法で制作された、幻想的な空間表現。』
Cornelius「いつか / どこか」
『こちらはDAWで緻密に処理され構築された、理知的な空間表現。』
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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