旗艦セパレートの技術を凝縮
ラックスマン「L-509X」レビュー。“ワンボディ・セパレート”を体現した旗艦プリメインアンプ
この基板上には、伝送歪みを検出してキャンセルするラックスマン独自のディスクリート構成・増幅帰還回路「ODNF4.0」を搭載する。この回路は初期スルーレートが高く、超広帯域特性も実現する。音質的には再生音源の抑揚をワイドレンジに再現し、アナログやハイレゾにおける倍音再現にも大きく貢献する。ちなみにODNF4.0は最新バージョンとして、さらなる低インピーダンス化、高S/N化がなされている。
このODNF4.0の基板上には、パワーアンプ「M-700u」と同等の3段ダーリントン、4パラレルプッシュプルの出力段も搭載されている。120W×2(8Ω)の出力を発生するが、ODNF4.0をピールコート基板に配置したことを考えると、M-700uというよりは、旗艦モデルのM-900uに極めて近い内容になっていることが理解できる。
この出力段からスピーカー端子までは、3.5mm2という断面積の広いワイヤーを使用。抵抗値が極小の大容量スピーカーリレーもパラレルで使用している。これにより低インピーダンス化を押し進め、370という高いダンピングファクター値が実現できた。
■強大な電源部。各パーツや配線にまでこだわった音質チューニング
中央の電源部も実にマッシブで高品位である。600VAの高レギュレーションEI型トランスと左右合計80,000μF(10,000μF×8)の大容量平滑コンデンサーを搭載している。これらによって、いかなる負荷変動でも安定した電源供給を続ける高慣性(ハイ・イナーシャー)を備えた電源を実現している。
こうした内部構成からも、フラグシップのセパレートアンプ C-900u/M-900uの技術が、本機のワンボディに凝縮されていることがわかるだろう。その回路とその音質に魅了されて今年の春にC-900uを導入した私からしても、L-509Xの構成は非常に贅沢なものに写る。
また、同社は回路のみならず、パーツや内部配線にも最新の配慮を行って音を磨き上げてくるところが素晴らしい。例えば、基板を延長すればワイヤーを使わずに済むところも、わざわざワイヤー(螺旋巻き、スパイラル・シールドOFC線など)で接続する場合がある。その方が音が良いからだ。
コンデンサーや抵抗も独自で開発したカスタム・メイド品である。入力端子やスピーカー端子も実に高品位であるが、今回は、LINE-1に高品位なカッパーアロイ製RCA端子を装備した。実に素晴らしい技術内容と高品位なパーツが搭載、使用されているのである。
■歪み感が皆無のニュートラルな音調。スケールの大きな音場を描く
今回のレポートでは通常の試聴に加えて、ラックスマンの試聴室や今年の各オーディオショウで、同社が輸入するFOCALの「Scala UTOPIA EVO」や「Maestro UTOPIA EVO」と組み合わせてドライブした印象も加えておきたい。なお、以下で組み合わせているSACDプレーヤーは「D-08u」、アナログプレーヤーは「PD-171A」、カートリッジはオルトフォン「MC-Q30S」である。
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