旗艦セパレートの技術を凝縮
ラックスマン「L-509X」レビュー。“ワンボディ・セパレート”を体現した旗艦プリメインアンプ
L-509Xの音質は、わずかにウォームな質感も湛えた、ニュートラルな音調が特徴。再生する音源の弱音を最大限に再現し、強音でも歪み感が皆無で、スケールの大きな音場を描くところが魅力である。
特にダブル・ウーファーを搭載するMaestro UTOPIA EVOを完全にグリップし、中低域に厚みのあるマッシブな音で朗々とドライブしたことに感激した。高速レスポンスで、強音ではかなり高い音圧を体感させてくれる。同社の主張する“ワンボディ・セパレート”という設計思想が反映されている印象を受けた。まさにスピーカー制動力が高く、弱音から強音までのダイナミックレンジが広いアンプと言える。
細かく分析するなら、プリアンプ出力のディスクリート構成のバッファー、出力段のODNF4.0増幅回路の効果により、音の立ち上がり、音のレスポンスが極めて高い印象を受ける。これは搭載する高慣性電源の効果でもある。
■精緻な空間再現や豊潤な倍音にも注目
ラックスマンは、広く深い空間に奏者を高解像度かつリアルに描写することにも注力しているが、本機の空間再現性の高さには目を見張るものがある。一方で解像度も際立っている。同社は測定数値だけに頼ることなく、聴感上でも空間再現性を確認して、内部コンストラクション、パーツ・アレンジなど細かな音作りを行っているということだが、それはこの音からも理解できる。
もし、読者が本機を試聴するなら、まずは楽器数が少ない穏やかな室内楽やヴォーカル曲を再生してみると良いであろう。きっと、楽器や声の倍音が豊かさに驚くことになるだろう。
CDを再生しても、高密度な音が聴けるはずだ。同社は真空管アンプも手がけているので、AB級アンプにおいても、透明度が高く豊かな倍音が再現できるように音作りをすることが可能なのである。
搭載するフォノイコライザーにも、高S/Nでダイナミックレンジの広さを感じる。音の鮮度が高く、レコードの音を瑞々しく、空間性をもって再現するところに好感をもった。
制動力が高く、高品位なプリメインアンプを求める方は、L-509Xを早々に聴いてみて欲しい。“ワンボディ・セパレート”思想が反映されたスケールの大きな音楽描写に、きっと惚れ込むことであろう。長く愛用できるモデルとして、私は大いに推薦する。
(角田郁雄)
■試聴音源
<ハイレゾ>
・Quiet Winter Night/ホフアンサンブル(2L 5.6MHzDSD)
・コープランド/庶民のためのファンファーレ、アパラシアの春(CHANDOS 96kHz/24bitflac)
<CD>
・フランク:ヴァイオリン・ソナタ、ショーソン:コンセール(kkc-5787)
・マイルス・デイビス/highlight from the plugged nickel(CK67377)
<SACD>
ブリテン&ヒンデミット:ヴァイオリン協奏曲(PTC-5186625)
<LP>
レスピーギ:交響詩「ローマの松」「シバの女王ベルキス組曲」(RM-1509)