【特別企画】臨場感豊かな“パーソナルコンサートホール”の実現
空気感までリアルに再現。クロスゾーンの“頭外定位”ヘッドホン「CZ-1」でクラシックBDを味わい尽くす
■オペラの壮麗な美術とバランスする、臨場感溢れるサウンドを鳴らす
次に“ファウスト”繋がりでボーイト『メフィストフェーレ』を聴く。2015年にバイエルン国立歌劇場で上演された舞台のライヴ映像で、タイトル役がルネ・パーペ、ファウストがジョセフ・カレヤ、マルゲリータがクリスティーネ・オポライスという豪華な顔ぶれのステージである。ローランド・シュヴァープの演出は意表を突く仕掛けも頻出するが、メフィストフェーレのたくらみや悪行の数々を際立たせる展開は説得力があり、思わず引き込まれてしまう。
ボーイトは本来台本作家として活躍した人物で、作曲は本業ではないのだが、この作品には異様とも言えるほど力が入っている。管弦楽はワーグナーばりに響きが厚く、金管楽器や木管楽器の使い方にも独自の工夫が見られる。冒頭からすべての楽器を鳴らし切り、音響的なスケールの大きさと色彩の豊かさは見事と言うしかない。
ステージの美術もそのスケールにふさわしい華麗さと深い陰影をたたえているので、映像と音響のバランスを保つためには、両方の表現力を拮抗させる必要がある。今回使用したディスプレイは東芝レグザ「55X910」のOLEDで画面は55インチと余裕があり、コントラスト感も液晶テレビとは一線を画す。読者の中には60型以上の大画面テレビをお持ちの方も少なくないと思うが、そんな大型テレビとの組み合わせでは3.5m長の付属ケーブルが威力を発揮し、CZ-1をストレスなく使いこなすことができる。
大きくパワフルな映像に見合うサウンドを引き出すためには何が必要か、ずばりその答えは臨場感である。バイエルン歌劇場は伝統的な馬蹄形のオペラハウスだが規模が大きく、ステージとオーケストラの音響的エネルギーを堪能するには、平土間席中央から前方あたりがベストな環境を提供する。このBDは明らかにそれを意識した音作りで、独唱やオーケストラが比較的近い位置に定位し、明瞭かつ力強い音像を捉えている。
通常の密閉型ヘッドホンで聴くと、特にパーペやカレヤら男声陣の独唱が耳に張り付きがちだが、CZ-1は同じように近いとはいえ、音の重心が確実に頭の中から外側に出ているので、違和感を感じることがほとんどない。オペラの場合、独唱が自然に聴こえることが肝心なので、まずは一安心だ。酒場の合唱の場面、前後に位置する歌手たちの動きをステージ上で遠近感豊かに描き出し、派手で鮮やかな照明と立体的な音響の対比が際立つ。
続いてオーケストラに注意を向けると、こちらも非常に鮮度が高く、楽器ごとの音色の違いの鳴らし分けや細かいフレーズの描写に曖昧さがない。そして、一番感心したのはティンパニと金管楽器のマッシブな力強さだ。第一幕終盤、メフィストフェーレは舞台上に用意された大型バイクでファウストを連れていくのだが、そのシーンでは音楽だけでなくステージ上の歌手たちの動きや効果音などが非常にリアルで、劇場空間に居合わせたかのような臨場感を味わうことができた。
CZ-1は独自のユニット構成を採用していることもあって本体ハウジングは大きめだが、その余裕がダイナミックレンジの広さを引き出しているのか、大規模なオペラでも音場が萎縮することなく、空間が伸びやかに感じられる。これは、レンジの広い音源を再生するときにはとても重要な要素の一つだと思う。
◇
今回、オーケストラとオペラの例を紹介したが、クラシック映像のBDは協奏曲や器楽曲から声楽曲まで幅広いジャンルに及び、DVD時代を上回る充実したラインナップが揃う。優れたライブ映像も数多くリリースされていて、今回紹介したような高画質テレビとディスクプレーヤー、そしてCZ-1を組み合わせれば、パーソナルシアターと呼ぶべき特別な空間が部屋の中に誕生するだろう。
音響的なカギになるのは、演奏会場の空気感や楽器の実在感をリアルに再現すること。現実の音場に近い空間表現を目指したCZ-1のサウンドは、臨場感を再現する上で大きな価値を持つ。凝りに凝った構造と作り込みが目を引くが、そこから引き出すことのできる臨場感の豊かさは、既存のヘッドホンでは置きかけられない価値を持っていると断言できる。
<第1回>
『クロスゾーンの“頭外定位”ヘッドホン「CZ-1」で、ロック&ポップスのライブ映像BDを堪能する』→記事はこちら
特別企画 協力:クロスゾーン
次に“ファウスト”繋がりでボーイト『メフィストフェーレ』を聴く。2015年にバイエルン国立歌劇場で上演された舞台のライヴ映像で、タイトル役がルネ・パーペ、ファウストがジョセフ・カレヤ、マルゲリータがクリスティーネ・オポライスという豪華な顔ぶれのステージである。ローランド・シュヴァープの演出は意表を突く仕掛けも頻出するが、メフィストフェーレのたくらみや悪行の数々を際立たせる展開は説得力があり、思わず引き込まれてしまう。
ボーイトは本来台本作家として活躍した人物で、作曲は本業ではないのだが、この作品には異様とも言えるほど力が入っている。管弦楽はワーグナーばりに響きが厚く、金管楽器や木管楽器の使い方にも独自の工夫が見られる。冒頭からすべての楽器を鳴らし切り、音響的なスケールの大きさと色彩の豊かさは見事と言うしかない。
ステージの美術もそのスケールにふさわしい華麗さと深い陰影をたたえているので、映像と音響のバランスを保つためには、両方の表現力を拮抗させる必要がある。今回使用したディスプレイは東芝レグザ「55X910」のOLEDで画面は55インチと余裕があり、コントラスト感も液晶テレビとは一線を画す。読者の中には60型以上の大画面テレビをお持ちの方も少なくないと思うが、そんな大型テレビとの組み合わせでは3.5m長の付属ケーブルが威力を発揮し、CZ-1をストレスなく使いこなすことができる。
大きくパワフルな映像に見合うサウンドを引き出すためには何が必要か、ずばりその答えは臨場感である。バイエルン歌劇場は伝統的な馬蹄形のオペラハウスだが規模が大きく、ステージとオーケストラの音響的エネルギーを堪能するには、平土間席中央から前方あたりがベストな環境を提供する。このBDは明らかにそれを意識した音作りで、独唱やオーケストラが比較的近い位置に定位し、明瞭かつ力強い音像を捉えている。
通常の密閉型ヘッドホンで聴くと、特にパーペやカレヤら男声陣の独唱が耳に張り付きがちだが、CZ-1は同じように近いとはいえ、音の重心が確実に頭の中から外側に出ているので、違和感を感じることがほとんどない。オペラの場合、独唱が自然に聴こえることが肝心なので、まずは一安心だ。酒場の合唱の場面、前後に位置する歌手たちの動きをステージ上で遠近感豊かに描き出し、派手で鮮やかな照明と立体的な音響の対比が際立つ。
続いてオーケストラに注意を向けると、こちらも非常に鮮度が高く、楽器ごとの音色の違いの鳴らし分けや細かいフレーズの描写に曖昧さがない。そして、一番感心したのはティンパニと金管楽器のマッシブな力強さだ。第一幕終盤、メフィストフェーレは舞台上に用意された大型バイクでファウストを連れていくのだが、そのシーンでは音楽だけでなくステージ上の歌手たちの動きや効果音などが非常にリアルで、劇場空間に居合わせたかのような臨場感を味わうことができた。
CZ-1は独自のユニット構成を採用していることもあって本体ハウジングは大きめだが、その余裕がダイナミックレンジの広さを引き出しているのか、大規模なオペラでも音場が萎縮することなく、空間が伸びやかに感じられる。これは、レンジの広い音源を再生するときにはとても重要な要素の一つだと思う。
今回、オーケストラとオペラの例を紹介したが、クラシック映像のBDは協奏曲や器楽曲から声楽曲まで幅広いジャンルに及び、DVD時代を上回る充実したラインナップが揃う。優れたライブ映像も数多くリリースされていて、今回紹介したような高画質テレビとディスクプレーヤー、そしてCZ-1を組み合わせれば、パーソナルシアターと呼ぶべき特別な空間が部屋の中に誕生するだろう。
音響的なカギになるのは、演奏会場の空気感や楽器の実在感をリアルに再現すること。現実の音場に近い空間表現を目指したCZ-1のサウンドは、臨場感を再現する上で大きな価値を持つ。凝りに凝った構造と作り込みが目を引くが、そこから引き出すことのできる臨場感の豊かさは、既存のヘッドホンでは置きかけられない価値を持っていると断言できる。
<第1回>
『クロスゾーンの“頭外定位”ヘッドホン「CZ-1」で、ロック&ポップスのライブ映像BDを堪能する』→記事はこちら
特別企画 協力:クロスゾーン