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【特別企画】英国ブランドならではの音作り

19,800円でこの音質 ー Cambridge AudioのCD&プリメイン「CD5/AM5」を聴く

公開日 2017/12/25 14:08 大橋伸太郎
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組み合わせ3:FOSTEX GX100NJ
フラットでウェルバランスなサウンド。ジャンルを選ばない表現力がある

GX100BJは、国産ブックシェルフスピーカーを代表するシリーズの最新作。他の2機種に比べ能率が82dBとやや低目(Q350は87dB、STUDIO 230BRNは88dB)であるため、ほかの2台よりややボリューム位置を上げて試聴を行った。

FOSTEX「GX100BJ」¥OPEN(予想実売価格138,000円前後)

日本のスピーカーらしく優れた解像感とフラットな周波数レンジを備え、バランス主体の正攻法で作られたGX100BK。一方でAM5とCD5のコンビは、中域を主体としてバランスよくかつ量感豊かに音楽表現をするタイプ。異なる性格が互いに補い合い好結果だった。

高橋アキはやや箱庭的だが、奏者がピアノで表現する音楽がバランスよく誇張なくそこにある。3機種の中で一番コンパクトなスピーカーだが音楽のダイナミクスまで表現され、シューベルトらしい低音和音の強い打鍵で震わせるような場面では十分過ぎる効果がある。強弱の変化もスムーズに淀みなく再現。音像が出過ぎず引っ込まず、数メートル先のステージにピアノが実在して歌っているリアリティさえある。

マクベス第一幕第二場のネトレプコが手紙を読み上げるセリフの口跡も明瞭で際立つ。そして解像感が秀逸だ。オケとの距離感、オケの弦楽の解像感も明瞭で透明感があり色付きがなく端正。低弦のオブリガートも音程が明瞭で小気味よい。小なりともモニター的な音調が前面に出て音場表現こそややコンパクトだが、オケが音場(空間)にただよう繊細な表現で差を付ける。

CD5/AM5をGX100BJと組み合わせたところ

キップ・ハンラハンのニューヨーク・ラテンは、楽音(パーカッション、ベース、キーボード、etc)がガラスが砕け散ったように音場に暴力的に散乱する録音の狙いと特徴がよく再現される。低音は必要十分だが、さすがに最低域は苦しくエレキベース低域は音程が甘くなるが、ねばっこい硬質な芯が現れる。アルトサックスは明るくなり過ぎず夜の音楽らしい退廃的な曇った艶がある。GX100BKとの組み合わせでは、ジャンルを選ばない再現性を発揮してくれた。



AM5とCD5は、3機種のスピーカーからそれぞれ顔立ちの異なる音楽を引き出した。価格の制限とバランスの中で聴いた方が、大出力・高解像度の高額なリファレンスアンプで聴くよりむしろスピーカーシステムの個性が露わになるのだ。

今回の組み合わせの中では、オールマイティにお薦め出来るのが「GX-100BJ」だが、フラットレスポンスでウェルバランスのオーディオ的に整った音調が逆に物足りない方もいるかもと感じた。野放図で元気な音調を求めるなら「STUDIO 230BRN」がいい。同シリーズのフロア型「STUDIO 270BRN」ならジャズ、ロックが楽しくなるはずだ。クラシックのアコースティックなホールトーンを重視するなら、「Q350」が魅力。プレーヤー・アンプ・スピーカーが全て英国製というチーム構成で、小なりとも濃い音楽を聴かせてくれる。

今回の試聴を通じて、CD5/AM5が優れた音楽性を備えていることを改めて確認することができた。破格のエントリーモデルながら、いずれもアナログ回路の洗練など正攻法のアプローチを行うことで、音楽を楽しむための必要かつ十分な音質を実現した。

こう言ってしまうと当たり前のようだが、こうしたプレーヤー/アンプは現代において貴重である。ポータブルオーディオから始めてオーソドックスなオーディオへステップアップしたい方、あるいは音楽性豊かにバランス良く聴きたいという音楽ファンの方に、ぜひおすすめしたいコンポーネントと言える。

(大橋伸太郎)

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