MiGLOの導入で音ズレや左右の音切れ解消
“完全ワイヤレスイヤホンの理想形” を突き詰めた第2世代モデル、EARIN「M-2」レビュー
メタル製のケースは、スリムでストレートなスティック型。シンプルな形の中に、両サイドのくぼませ方など造形の美しさもある。スライド式開閉機構にはマグネットが仕込まれており、開けるときはスッと、閉めるときはカチャンと非常に滑らかに動く。EARINのこだわりは、こうした手応えや音にまで行き届いている。
機能面での大きな進化点は、「トランスペアレンシー」モードの追加だ。通話マイクを利用して外部の音を取り込む機能で、ONにすると音楽を聴きながら電車のアナウンスなど周囲の音も聞く事ができ、外出時も安全に使用することができる。本機能は、新たに採用した独自開発の新型フォームチップによって高められた遮音性と組み合わせることで、自由に静けさをコントロールできる。外音の取り込み具合は専用アプリから設定可能だ。なおマイクは通話時の集音、トランスペアレンシー機能の他、通話時のノイズキャンセリングにも利用。お互いの声をよりクリアに届ける役割も担っている。
今少し紹介したアプリも、このモデルの活用には欠かせない要素となりそうだ。今回試用した時点ではまだ開発途上で、上記のトランスペアレンシーのマニュアル調整など一部の機能しか試せなかったのだが、他にもトランスペアレンシーのオート設定、左右音量のバランス調整、全体の音量ゲインの調整などが今後搭載される見込みという。M-2 発売時まで、そして発売後の機能追加も期待したい。
サウンドも一聴して良質なものと分かるほど洗練されている。シックな外観とも調和する、落ち着きがあって物腰の柔らかな音調だ。バンドサウンドからもロック的な迫力より、歌や演奏のメロウなニュアンス、スイートな雰囲気を巧みに引き出してくれるタイプだ。
バランスド・アーマチュア・ドライバーは定評あるKnowles社製を搭載。その素性の良い透明度のある音の土台の上に、EARINによる丁寧なチューニングが施されているのだろう。派手さを強調するのではなく、自然な表現を大切にしている印象で、常に心地よく音楽を再生してくれる。
Bluetooth製品、特に完全ワイヤレスイヤホンで、こういったソフトでウォームなサウンドを備えているモデルは少ない。ワイヤレスイヤホンでは、まず使い勝手や機能性の面が大切で、製品選びの一番のポイントになるということに異論はない。もちろんM-2は使い勝手や機能性においても万全である。だからこそ、このモデルのこのサウンドなら、“音が好みだから”というのを第一の理由に選ぶのも十分にアリと言える。
さて、スマートフォンと組み合わせて使うワイヤレスイヤホンでは、動画コンテンツとの相性もポイントだ。実はBluetoothイヤホン全般には、無線伝送のタイムラグで映像から少し遅れて音が聞こえてくるという弱点、レイテンシーがある。完全ワイヤレスイヤホンならなおさらだ。
レイテンシーの大きさは製品ごとに異なり、動画を楽しむことも大切にしたいならレイテンシーの小さい製品を選ぶことが重要になる。M-2はこれについても優秀で、海外ドラマや映画の吹き替え、アニメなどの作品では、口の動きとセリフのタイミングのズレも全く気にならないし、トーク番組で身振り手振りから遅れて声が聞こえてくると感じることもなかった。「スマホで気軽に」という感覚での動画視聴にはもってこいだろう。
使い心地、着け心地、聴き心地。M-2はそれら全てが見事に整えられた完全ワイヤレスイヤホンだ。ファーストモデルの成功に慢心することなく、「完全ワイヤレスイヤホンの理想形」を真摯に突き詰め続けたからこそ生まれた、EARIN渾身のモデルといえるだろう。