ラズパイと合わせても1万円以下
スマートスピーカーは自作できる! 3千円で買える「Google AIY Voice Kit」レビュー
拡張ボードの基本的な位置付けだが、Raspberry PiとI2Sで通信するDACボードと考えればいい。ALSA(Linuxのサウンドシステム)にもサウンドカードとして認識され、サウンドファイルを再生すれば音楽を聴くこともできる。付属のスピーカーユニットは"音が出ればOK"的なつくりで、段ボールで挟み込むだけなどセッティングもかなり適当なだけに、出音は残念なレベルだが、小型アンプ搭載のDACボードとしてみれば他に使いみちもありそうだ。
搭載されているDACチップを調べてみると、「Maxim MAX98357A」ということがわかった。このチップはサンプリングレート8kHz〜96kHz、量子化ビット数は16/24/32bitというスペックで、最大出力3.2W(4Ω/5V)のクラスDアンプとしての機能も備えている。マスタークロックの供給が不要なこともあり、Raspberry Pi向けの拡張ボードにいくつかの実績があるチップだ。
試しに44.1kHz/16bitのWAVを再生したところ、48kHz/32bitにアップサンプリングされていることがわかった。不思議に思い今度は96kHz/24bitのWAVを再生してみると、48kHz/32bitに変換されていた。どうやらlibspeexというライブラリにより48kHz/32bitへ強制変換する仕様らしく、ドライバを見直さないことにはHi-Fi再生は狙えない。MAX98357AのピンアサインはPCM5102A用ドライバと共通なため、それを流用することもできそうだ(そうなるとマイクユニットは使えなくなりそうだが)。
ただし、MAX98357Aというチップは入力データ(ステレオ)から左右チャネルのどちらか、あるいは左右を統合した信号を出力する仕様だ。この拡張ボードにはMAX98357Aが1基しか搭載されていないため、そもそもステレオ再生には利用できない。基板にはRチャンネルのスピーカー端子パターンが用意されているので、ステレオ再生も狙えると早とちりしそうになるが、そうではない。もっとも、3千円という価格を考慮すれば、スマートスピーカー開発に関心がないユーザでも楽しめる、"イジり甲斐のある"DACボードとして見ることもできそうだ。
(海上 忍)