何ができる? 使い勝手は?
5年目に突入のアップル「CarPlay」レビュー。iPhone連携はカーライフに何をもたらすのか?
■電話の発信やメッセージ送信を声で瞬時に行える
何度も書いているが、CarPlayは音声操作がインターフェースの基本にある。この音声操作は、音楽以外にも活用できる。
たとえば電話。電話アプリのアイコンをタップすると、すぐさまSiriが「誰に電話しますか?」と聞いてくる。
「メッセージ」も同様だ。立ち上げると「誰にメッセージを送りますか?」と音声で指示を求められる。誰に送るか伝えると、次にメッセージの内容を聞かれる。最後にメッセージの宛先と内容がSiriによって読み上げ、最後に「送信しますか?」と聞かれるので、「送信」と言えば送ることができる。
わざわざアイコンをタップしてアプリを立ち上げる必要も、実は無い。ハンドルの音声アシスタントボタンを押しながら「○○さんに電話」「○○に××とメッセージ」と発話すれば、電話やメッセージを送ることができる。これは便利だ。できればLINEやFacebookメッセンジャーなど、ほかのアプリでも使いたい。
■CarPlayのナビ機能はかなり貧弱
もうひとつ、アップルのマップを使ったカーナビ機能にも触れておきたい。アップルの地図機能は、ローンチ当初は不具合の多さで話題となったが、その後着実に機能向上を続け、いまではかなりまともになっている。
一方でCarPlayに対応しているカーAV機器は、ほとんどが独自のナビ機能を備えている。つまりこういった場合、対応機器のナビとCarPlayによるナビ、どちらも使えることになる。
ちなみにフォルクスワーゲンの純正ナビ「Discover Pro」の場合、Discover Proのナビを使いながら、CarPlayのナビ機能を起動することはできない。その逆も同様で、どちらか片方のナビを選ぶ必要がある。
そうなると、どちらが便利か、賢いのかという話になる。これを知るためには、iPhoneの「マップ」を使ってナビ機能を試してみると良い。大まかなCarPlayのナビ機能の精度が体感できる。
実際に純正ナビとCarPlayのナビ、二つのナビを使って乗り比べてみると、(めちゃくちゃ狭い場所を無理矢理通そうとするなど)あまり賢いとは言えないDiscover Proであっても、CarPlayのナビよりはるかに精度が高い。
CarPlayのナビ機能は、まずルート探索の精度が低すぎるし、機能も貧弱すぎる。たとえばルート探索時に「距離優先」「時間優先」の結果すら提示されないのだ。
なおアップルの「マップ」アプリには、オプションに「通行料金」「高速道路」を利用するか利用しないか選ぶ機能があるのだが、これを「利用しない」に設定した上で、埼玉県新座市から池袋までのルートを探索したら、「すべての経路で通行料金の支払いと高速道路の利用が必要」と表示された。…そんなわけはない。
CarPlayのナビ機能では唯一、目的地を声で入力できるのが便利だと思ったが、このルート探索精度の低さでは、積極的に使う理由はない。
■Apple Musicを使っていたり頻繁に電話するならオススメ
CarPlayの機能を確認してきた。iPhoneを持っていて、Apple Musicやアップルのミュージックアプリを使っている方なら、ハンドルのボタン+声で様々な操作が行える恩恵を感じられるはずだ。
一方、車内で頻繁に通話する方ならどうかわからないが、少なくとも私には、電話やメッセージ機能の利便性はそれほど強く感じられなかった。もう一回書くが、LINEなどの読み上げや送信ができたら、劇的に便利になりそうなのだが…。
カーナビ機能も同様だ。純正ナビの性能がよほど貧弱ならともかく、わざわざアップルのナビを使う理由が見当たらない。
こう書くと、CarPlayには魅力があまりないように思えるかもしれないが、そうではない。筆者は現在、Apple Musicを使っているので、声で手持ちライブラリーやApple Musicを検索・選曲できるのは非常に便利だった。この一点だけで「CarPlay対応ナビで良かった」と素直に思えた。
逆に言うと、「アップルの音楽アプリやPodCastなどを声で操作する」「頻繁に運転中に電話の発信操作をする」「運転中に声でメッセージを出す」という方以外は、CarPlayのメリットはあまり大きくない。
CarPlayはそれなりに魅力的だが、現状では恩恵を強く感じる方は少数派だろう。率直なところ、CarPlayに対応しているからその機器や車種を選ぶ、というほどのバリューは感じられなかった。
冒頭で触れたAmazonやGoogleは、音声操作で車室内の温度を指示したりなど、よりクルマの奥深くまでコントロールしようとしている。こういった動きを受け、アップルが次にどういった手を打つのか、実に興味深い。