海上忍のラズパイ・オーディオ通信(46)
Google Play Musicをラズパイで。ストリーミングならではの“音楽との出会い”を体験
世のRaspberry Pi向けLinuxディストリビューションを眺めてみると、やはり“ぶら下がり方式”を好む傾向が明らかだ。最もポピュラーな「Volumio」は、Spotifyプレミアムサービス向けのプラグインを用意しており、これをインストールするとMPDにSpotifyの楽曲情報が統合され、WEBブラウザから操作できるようになる。
プラグイン方式以外の選択肢として「upmpdcli」がある。このソフトは、UPnP/OpenHome互換の再生機能をMPDに追加することを主目的としているが、Google Play Musicの他、Tidal、Qobuzというストリーミングサービスのレシーバーとしても機能する。Moode Audio Playerはこの方式を選択しており、upmpdcliの設定ファイルに情報を書き加える程度でそれらストリーミングサービスを楽しめる。
upmpdcliはその名が示すとおり、MPDのクライアントとして動作するUPnPレンダラーであり、各種ストリーミングサービスもUPnP/OpenHome経由で利用できる。つまり、LINN「Kazoo」やエソテリック「Sound Stream」、I-O DATA「fidata Music App」といったOpenHome互換アプリを使いストリーミングサービスの曲操作を行えるということだ。
ワンボード・オーディオ・コンソーシアムの独自ディストリビューション「1bc」もupmpdcliを採用しているので、ストリーミングサービスへの対応は容易なこと。設定ファイル(/etc/upmpdcli.conf)にGoogle Play Musicのアカウント情報を書き込むだけで、1bcの動作するRaspberry PiがUPnP/OpenHome互換アプリのメディアサーバとして現れ、それを選択するとGoogle Play Musicのブラウズが可能になる。再生開始/停止などの操作体系はまったく同じで、アルバムアートワークや曲情報もしっかり表示される。日本未導入のTidalとQobuzは試していないが、アカウント情報さえ登録すればまったく同様に動作するはずだ。
ストリーミングサービスの使い方はとてもシンプルで、エソテリックがiOS向けに提供するアプリ「Sound Stream」を例にすると、最初に設定画面でミュージックライブラリにラズパイ側のシステムを選択すればOK。これで、「Gmusic」というフォルダにアクセスできるようになり、そこから「Library」や「Thematic」など下位のフォルダを開いて曲再生できるようになる。
ここで利用できるのは、Google Play Musicのサービスそのものだ。履歴情報はクラウド側で管理されているため、再生した曲/アーティストによって“お勧め”の曲も随時変わる。たとえば、マリーン(1980年代に活躍したAOR・フュージョン寄りの女性ボーカリスト)のアルバムをかけた時、同時期にヒットしていた寺尾聰(近年はもっぱら俳優として有名だが、AOR系の大ヒット曲がある)を勧めてくるところなど、決してディスク/ファイル再生では体験できない部分だ。
「アカウントの一貫性」も指摘しておきたい。Google Play Musicに限らず、音楽ストリーミングサービスはログイン時に使用したユーザーアカウントに履歴などの情報をひも付けるため、どのスマートフォン/オーディオ機器を利用してもユーザーの好みが引き継がれる。プレイリストなど登録した情報もそのまま利用できるから、移動中にスマートフォンで見つけたアーティストと同傾向の曲を帰宅後すぐに再生できる。
音質はファイル/ディスク再生にかなわないとしても、聴き放題だからこその“音楽との新しい出会い”はストリーミングサービスならではだろう。より高音質な音源を見つける作業は、出会いの後で構わないはずだ。このストリーミング再生のポジティブな側面を、ぜひ体験していただきたいと考えている。