ミックスウェーブ共同開発の日本向けモデルも
日本初上陸「FAudio」イヤホンのポイントをブランドマネージャーに聞く。3機種一斉レビューも
Lee氏はFAudioのイヤホンを特徴付けるいくつかのキーコンポーネントから解説し始めた。同社は長くイヤホンの開発製造に携わってきたブランドであることから、米ノウルズ社とも密接な関係を築いている。
「互いに持つノウハウを共有しながら、BA型のイヤホンで理想とする音を再現するためのベストな手段を模索してきました。私たちはフルレンジのBAドライバーを音づくりの中心に据えて、足りない部分は必要に応じて低域または中高域のBAドライバーを足して全体を仕上げています。これによって通常よりもさらに自然なクロスオーバーを実現しています。この独自技術にはまだ特定の名前を付けていません。暫定的に“特別なチューニングスキル”としてアピールしていますが、将来は特許取得も考えています」(Lee氏)。
ダイナミックドライバーには自社設計による二つのユニークな振動板技術がある。その一つが主力モデルの「Passion」などにも搭載されている、「メディカルファイバー振動板」だ。メディカルファイバーとは、人間の肌が持つ質感に近づけた人工繊維素材。「その名の通り、本来は医療向けの素材でオーディオ機器に応用した製品は他にないのでは」とLee氏が説く。素材の特徴は、入力信号に対してリニアで鋭いレスポンスが得られることだ。医療向けではあるものの、一般的にオープンな形で安価に入手できる素材であることもFAudioが採用を決めた理由だ。
もう一つのダイナミックドライバーに関連する独自技術は、フラグシップの「Major」に搭載する「ダブルダイヤフラム」だ。先述のメディカルファイバー素材を使った振動板にチタニウムの振動板を加えて、それぞれの特性をハイブリッドに補い合うダブルレイヤー構造にしている。これにより特に高域の滑らかな伸びが実現できるのだ。
「この理想的な構造に辿り着くために長い時間をかけました。異なる素材のダイヤフラムを組み合わせると、マグネットとの選択も再考する必要があったからです。ダブルダイヤフラム搭載のイヤホンには、大型のマグネットを最適な位置に乗せて、両方のダイヤフラムをスムーズに動かせるようにしています」(Lee氏)。
ハウジングの構造にもFAudioらしさが光る。Majorをはじめ、FAudioのオリジナルモデルは内部に複数の「空気室=アコースティック・チャンバー」を備えている。例えばPassionでは、二つのアコースティック・チャンバーによってダイナミックドライバーの背圧を効果的に抜くことで、低域の応答性能を高めている。MinorとMajorはさらに空気室をもう一つ追加したトリプルチャンバー構造だ。
ノズルも一つの空気室として捉えながら設計している。特に上位モデルのMajorは、ノズルの音導管に無酸素銅を採用して、内壁を磨くことで摩擦を減らし、滑らかで歪みのないサウンドを追求した。MajorとMinorはチャンバー構造が共通で、上位のMajorがダブルダイヤフラムを搭載している。
FAudioのイヤホンには独自開発によるイヤーチップが付属する。シリコン製のイヤーチップは「FA Vocal」と「FA Insturument」の2種類。もう一つのフォームチップも、形状記憶性能を独自にチューニングしたものだ。
シリコン製のイヤーチップは、ノズルに密着するチューブ形状のパーツと、耳にフィットする傘状のパーツに分かれているが、主にノズル側の長さを変えて互いの距離を調整することで中低域の再現性をコントロールしている。さらにノズル内壁のコーティングを変えることで、特別なチューニングに仕上げたという。FAudioのイヤホンは2pin端子によるリケーブルに対応しているが、「イヤーチップによるサウンドのカスタマイズにもぜひ挑戦してほしい」とLee氏が呼びかける。
■ミックスウェーブ共同開発から1機種、オリジナルモデルから2機種を試聴
今回はFAudioとミックスウェーブのコラボモデルである「Harmony」と「Major」、「Passion」のユニバーサルIEMを借りて試聴した。
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