[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第215回】そろそろ気になる首掛け/肩乗せスピーカー、ボーズ/JBL/ソニーの3製品を聴き比べ!
音の印象だが、スピーカーユニットを4基搭載するという正攻法で音質を高めてきており、実際の音調も正統派。くっきりとした音像、声の抜けの良さなどはまさに正統派の、そしてJBLのサウンドだ。一般的なステレオスピーカーシステムとヘッドホン、どちらと比べても違和感は少ない。「肩乗せスピーカーって、スピーカーとヘッドホンの中間みたいな感じ?」といった想像をされている方には「その想像に一番近いのがコレです!」と答えられる。
それぞれの音の質感の出し方もしっかりしており、ボーカルだけではなく、それぞれの楽器の音色やニュアンスも楽しみたいという方にも、肩乗せスタイルの中ではこの製品がフィットするだろう。
一つ気になるのは、ボーカルやベースなど左右のセンターに定位する音が、スピーカーの配置によるのだろうか、前後定位は後頭部寄りに配置されるところ。背後から聴こえるというほどではないが不思議な感じだ。他の部分ではスピーカー再生やヘッドホン再生との違和感が少ないからこそ、そこは気になる。
テレビと組み合わせてのブルーレイ再生でも、台詞が後頭部寄りになるのはやはり気になるのだが、台詞自体の感触は抜群に良い。明瞭な発声で内容もニュアンスも聴き取りやすく、適度な厚みで肉声感や実在感も豊かだ。「BTA」パッケージ付属のBluetooth送信アダプタとの組み合わせでは、音ズレも本当に気にならない。
前後の定位をあまり気にしない、もしくは慣れるだろうという判断をするならば、映像コンテンツ重視でこれを選ぶのもありだ。
■Sony SRS-WS1
Sony「SRS-WS1」は実売税込2万5,000円程度。ただ実は、ソニーの予想を超えたヒットで生産が追いつかず受注停止中……しばし待て! 実際ヒットも頷ける独自性と完成度を備えた製品なので、待つ価値はある。
使い勝手や機能性の面でまず一番大きいのは、今回紹介する中でこの製品のみ「Bluetoothスピーカー“ではない”」というところ。付属送信ユニットとの組み合わせでしか伝送できないので、「スマホから直でワイヤレス接続」などはできない。
また、複数の再生機器と組み合わせて使い分けるには、再生機器と送信ユニットのケーブル接続を物理的に挿し替える必要がある。なお送信ユニットの入力端子は光デジタルと3.5mmアナログだ。
いちいち挿し替えるのは面倒なので「テレビの光デジタル出力端子から送信ユニットに接続し、基本そのセッティングで固定」といった使い方が主になるだろう。
というかこちらは基本、テレビとの組み合わせを想定して設計されている製品だ。Bluetoothを採用しなかったのも、映像コンテンツでの音ズレを抑えることを重視しての判断だろう。
他と比べても独特な形状だが装着感は良好。スピーカーを搭載した部分が胸の側に大きく伸びており、肩乗せよりも「首かけ」と表現した方が適切かもしれない。そのおかげで重心が前方胸側に適度に寄っており、後ろにずり落ちることがない。ボーズのように柔軟性のある筐体でヌメッとフィットするわけではないが、日常生活の普通の動きで大きくずれることはなさそうだ。
連続再生時間は7時間と、こちらもJBLと同じく、コンテンツを視聴するときに着けて使う分には十分。テレビ番組にせよ映画にせよ、ぶっ続けでの視聴が7時間以上に及ぶことはあまりないだろう。
さらにこちらの製品は充電台ユニットが付属。「カバーを開けてケーブルを挿して」といった手間なしの「置くだけ充電」だ。うっかりしなければバッテリー切れの心配はほとんどなし!
前方に伸ばして耳との距離を確保し、配置されたスピーカーからスリット型開口部を通して耳に放射される音は、肩乗せスピーカーの中でも特にスピーカーらしい空気感や距離感が魅力だ。
テレビと組み合わせての映像視聴でなら、これが一番しっくりくる。「テレビのスピーカーから聴いているのと感覚は変わらないのに、音量を上げないでも聴きやすく、テレビの前から動いてもクリアなままで、音質は良くなる!」といった感じをイメージしてもらえればと思う。
さらに加えてこのモデルは、低音を補強するパッシブラジエーター機構とその低音と連動して震えるバイブレーション機能も搭載している。
後者も飛び道具ではなく、意外と普通に使える。バイブレーションをオンにすると、体感的には振動だけでなく、音の低音も少し持ち上げられる感じがするのだ。効かせ具合を弱・中・強と切り替えられるので、各自が自然と感じられる強さで常時オンにしておいても良いのではと思う。バイブレーション機能の使いこなしで、この製品のサウンドへの満足度は結構変わるはずだ。
さて、今回は新ジャンル「肩乗せスピーカー」の3製品を紹介させていただいた。屋内向けのワイヤレスオーディオという意味では、Bluetoothスピーカーと重なるところもあるが、「パーソナル」をより突き詰めたスタイルと言えるだろう。Bluetoothスピーカーが「半径3メートルの世界」だとしたら、肩乗せスピーカーは「半径30センチの世界」的な。
これまでにないスタイルの提案なので、しっくりくる方もこない方もどちらもいらっしゃるかと思う。だが、だからこそ店頭などで見かける機会があれば、ぜひ手にとってみてほしい。試してみたら妙にしっくりきてしまうかも!?
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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