注目のターンテーブルの誕生背景に迫る
アナログブランド「Tien Audio(ティエンオーディオ)」訪問記 ― アジアのアナログ名人はこんな人
昨年日本に上陸した台湾のアナログプレーヤーブランド、ティエンオーディオ。3つのモーターをつかって駆動するアナログプレーヤーTT3でデビューを飾った同社だが、実はまだまだルーツにまつわる情報が少ないのも事実だ。そこで今回は、オーディオライター田中伊佐資氏が、台湾のティエンオーディオへ電撃訪問!「アジアのアナログ名人」と紹介される、ティエンオーディオのジェフ・ティエン氏は果たしてどんな人物なのか。本稿では、貴重な体験となったその訪問記をお届けする。
■ティエンをもっと知るべく一路台湾へ飛ぶ
台湾のティエンオーディオが製造しているレコードプレーヤーTT3について、製品の広報やサポートを担当する嶋田亮さんとこんな会話を交わしたことがあった。
「田中さん、TT3はとてもいいものなんですが、日本ではまだそれほど認知されていないんですよ」
「昨年のアナログオーディオフェアで聴いてます。あのパフォーマンスは大したものです。どんどん音を追い込みたくなるような、マニア心をくすぐるメカです。でも、マニアはどうしたって海外製なら欧米に目が行っちゃうんじゃないですかねえ」
後で聞いたら、僕がポロッと口をすべらした最後のひと言に嶋田さんは少しムッとしたらしい。
TT3をさも分かっているような調子いいこと言ったって、結局分かってねえじゃねえか、である。この“べらんめい調"はなんの裏づけもない誇張ではあるが、そんなイメージなら現地へ行って取材をして(ちゃんと理解して)下さいと思わぬ方向に話が発展した。ということで3月のうららかなある日、台北へ飛ぶことになったのである。
台北に行ったら必ず訪れたい観光スポットが、華山1914だ。ショップ、レストラン、イベントスペースが一体になった広大な施設で、取材の前にまずはそこで思いっきり羽を伸ばすことにした……のではなく、そこから大通り1本を隔てた向かい側、一等地のビルにティエンオーディオがあった。
オフィスに通されるといきなり、そこはティエンさんの工房になっている。ハンダごてをはじめとした工具がたくさんあり、開発中なのか修理中なのか自社製品はもちろん、他社のプレーヤーがいくつも置いてある。
実は、いきなり残念なお知らせがあった。ティエンさんはエンジニアでもあるが、レコードプレーヤーのコレクターでもある。古今東西の製品を100台以上は軽く持っていることを嶋田さんは知っていた。ぜひ見せてもらえませんかとお願いしたが、それは倉庫に保管されていて、とても人に見せられる状態ではないということだった。嶋田さんにしてみれば、ティエンさんの凄さを僕に示したかったのかもしれないが、それはすぐに分かった。隣りの試聴室にかけて、8000枚以上のレコードが、棚にズラズラずらっとあったからだ。この数字は僕の目算で、1マスが平均30枚収容として、ざっと勘定して280マスはあった。
■ティエンをもっと知るべく一路台湾へ飛ぶ
台湾のティエンオーディオが製造しているレコードプレーヤーTT3について、製品の広報やサポートを担当する嶋田亮さんとこんな会話を交わしたことがあった。
「田中さん、TT3はとてもいいものなんですが、日本ではまだそれほど認知されていないんですよ」
「昨年のアナログオーディオフェアで聴いてます。あのパフォーマンスは大したものです。どんどん音を追い込みたくなるような、マニア心をくすぐるメカです。でも、マニアはどうしたって海外製なら欧米に目が行っちゃうんじゃないですかねえ」
後で聞いたら、僕がポロッと口をすべらした最後のひと言に嶋田さんは少しムッとしたらしい。
TT3をさも分かっているような調子いいこと言ったって、結局分かってねえじゃねえか、である。この“べらんめい調"はなんの裏づけもない誇張ではあるが、そんなイメージなら現地へ行って取材をして(ちゃんと理解して)下さいと思わぬ方向に話が発展した。ということで3月のうららかなある日、台北へ飛ぶことになったのである。
台北に行ったら必ず訪れたい観光スポットが、華山1914だ。ショップ、レストラン、イベントスペースが一体になった広大な施設で、取材の前にまずはそこで思いっきり羽を伸ばすことにした……のではなく、そこから大通り1本を隔てた向かい側、一等地のビルにティエンオーディオがあった。
オフィスに通されるといきなり、そこはティエンさんの工房になっている。ハンダごてをはじめとした工具がたくさんあり、開発中なのか修理中なのか自社製品はもちろん、他社のプレーヤーがいくつも置いてある。
実は、いきなり残念なお知らせがあった。ティエンさんはエンジニアでもあるが、レコードプレーヤーのコレクターでもある。古今東西の製品を100台以上は軽く持っていることを嶋田さんは知っていた。ぜひ見せてもらえませんかとお願いしたが、それは倉庫に保管されていて、とても人に見せられる状態ではないということだった。嶋田さんにしてみれば、ティエンさんの凄さを僕に示したかったのかもしれないが、それはすぐに分かった。隣りの試聴室にかけて、8000枚以上のレコードが、棚にズラズラずらっとあったからだ。この数字は僕の目算で、1マスが平均30枚収容として、ざっと勘定して280マスはあった。