ハイエンド機の試聴経験などを総動員
安くて良いアンプはこれだ! 5万円で買えるプリメインアンプ、注目9製品を一斉比較レビュー(後編)
<試聴モデル7>
・YAMAHA 「A-S301」 40,000円(税抜)
【主なスペック】出力:60W×2(8Ω)、入力:アナログRCA×7/フォノMM×1/光デジタル×1/同軸デジタル×1、スピーカー端子:バナナプラグ対応・2系統搭載、外形寸法:435W×151H×387Dmm、質量:9.0kg
■明朗で快活な音楽表現が特長。中域の厚みも心地良い
本機もやはり総合メーカーらしく、同社の全7機種あるプリメインアンプシリーズの中での末弟となるエントリーモデルだ。こちらもこの前に紹介したマランツやパイオニアのモデルと同様に、上位機の技術や知見が活かされた製品となっている。ルックスも、上位機である「A-S801」や「A-S501」同様の存在感を持つ。デジタル入力やMMフォノアンプ、そしてラウンドネス機能を備えるなど、多機能で凝縮感が高い。
ヤマハのアンプは、一貫して明朗で快活な音楽表現が特長だ。クラシックでは、音が硬くなる部分がどこにもなく、若干優しい質感を持った聴き易い音色を楽しめる。温かみを持った演奏の質感がホールに広がる様が心地よい。低域エネルギーのスピードはややゆったりと描くため、ふっくらとした余韻で再現されるようだ。
ロックやポップスでは、先述の朗らかさがとりわけ活かされ、エレクトリックギターのリフやエレクトリックベースのピッキングが重量感を持って再現され、ゴリッとしたエネルギー感でもって前に出てくる。バスドラムの沈み込み、つまりは重低域の再現自体はさほど深くはないものの、クラッシュシンバルのストロークのエネルギー感や、ギターのストロークがブワッと迫ってくる勢いに迫力がある。ボーカルなどの中域もふくよかで厚みを持った聴き心地を楽しめ、実に快活なのである。
ピアノトリオでも、ドラムスやウッドベースの十全なエネルギー感を楽しむことが出来た。ピアノは、タッチの丁寧な描き分けというよりかは、打鍵や低弦の迫力を嫌みのない表情で描くようだ。
【音楽ジャンル相性】
ポップス/ロック:A+
ジャズ:B
クラシック:A
<試聴モデル8>
TEAC 「AI-301DA-SP」 ¥OPEN(予想実売価格42,000円前後)
【主なスペック】出力:40W×2(4Ω)、入力:アナログRCA×2/USB-B(PC)×1/光デジタル×1/同軸デジタル×1/Bluetooth、スピーカー端子:バナナプラグ対応、外形寸法:215W×61H×254Dmm、質量:2.1kg
■USB入力時の音の鮮度感がとにかく良好。多様なデジタル入力も魅力
剛性の高い小さなボディへとコンパクトに納められたアンプ。同社が展開するA4サイズの500シリーズを、さらにダウンサイジングした製品だ。パワーアンプ部には、定評あるICEpower社製のデジタルアンプを採用する。
同軸や光デジタル入力に加えてUSB-DAC機能を搭載。さらには高音質なaptXコーデックに対応したBluetooth接続を搭載するなど、この価格ながら豊富なデジタル入力を持つことも大きなアドバンテージと言える。
スピーディーかつエネルギッシュに演奏の表情が描写されていくアンプだ。クラシックでは、コーラスの声が実に張り出しよく迫ってくる。声や楽器の音色に艶やかさがあるとともに、スピードやエネルギーに満ち溢れている。ティンパニーの、芯を持った飛び出してくるようなアタック表現など、音の立ち上がりが特に俊敏だ。
ロックミュージックでもそのパワー感とスピード感が心地よい。ベースやドラムのコンビネーションが、適切な低域の重量感を持ちつつも素早いのだ。ボーカル表現は、華美になりすぎずに聴き易い表情。
ジャズも同様で、ピアニストの男性的で力強いタッチによる指さばきが印象的に届いてくる。全体的に、音色的には中低域に充実感があり、高域が派手にならないので聴きやすい。とにかくサウンドの力強さが特徴的である。音響的なレスポンスや密度感などが十全で、例えて言うなら、アスリート的な俊敏さ強靭さというような、スポーティーな性能の高さを楽しめる。
また、デジタルアンプとのマッチング故か、内蔵USB-DACで鳴らしたときのバランスが良好で、よりこのアンプの魅力が十全に発揮されるようであった。音の鮮度感がとにかく良好で、アナログ入力に比べ、よりストレートでロスの少ない音色感が得られる。表現に連続性がありスムーズで、楽器の立体的な分解能など、解像度の高い描写が楽しめる。よって、内蔵DACを使ってコンパクトにシステムを組みたい人に特におすすめといえる。
【音楽ジャンル相性】
ポップス/ロック:A
ジャズ:A
クラシック:A