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fidataやNucleusとも比較検証

より良いオーディオには “PC無し” が良い? それともPCを使うべき? 2つの方法を徹底的に比べた

公開日 2018/10/06 06:30 逆木一
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「汎用性」こそPCをオーディオ再生に用いる最大のメリット

筆者は「汎用性」がPCの大きなメリットだと思っている。そして汎用性を最大限に活かすべく、canarino Filsでは再生ソフトとしてRoon・JRiver Media Center・JPLAY、サーバーソフトとしてTwonky Server・MinimServer・Asset UPnP、その他にBubbleUPnP Serverを同時に起動している。これはPCだからこそ実現できる運用方法であり、組み合わせるUSB DACやネットワークプレーヤーを選ばず、さらに様々な面から検証することが可能になる。

このような使い方に対し、「まるでPCを最適化できていない」という指摘もあるだろう。特定のソフト/機能に限定して性能を追求するという方向性があることは承知だが、それは筆者からすればPCの汎用性を削り取ることでもあり、悩ましい。使用するソフトの絞り込みや不要なプロセスのカットといった各種最適化については、「オーディオ用PCにはまだまだ伸びしろがある」という風に、気楽に考えるくらいが筆者にはちょうどいい。


オーディオ用PCとオーディオ専用サーバーを利用スタイル別に聴き比べる

ここからは、高い汎用性をもって「何にでも使える」オーディオ用PCと、「特定の機能に特化した」専用機を様々な用途で比較し、両者の価値を明らかにしていきたい。

今回の試聴の基本システム図。3つのサーバーが同じオーディオ用ハブに接続されている

今回は上述のオーディオ用PC「canarino Fils」に加えて、「専用機」としてRoon Labs純正の単体Roon Server「Nucleus+」と、fidataブランドの単体サーバー「HFAS1-XS20」を用意した。

「canarino fils9」標準仕様価格: 198,000円(税抜)※上述のように逆木氏のcanarino filsは内容をアップグレード済み


「Nucleus+」2,498ドル ※日本未導入


fidata「HFAS1-XS20」648,000円(税抜)

各機器に同じ音源をインポートしたうえで、JS PC Audioのオーディオ用ハブ「NH100」に接続し、同時にコントロールが行える状態にする。canarino FilsはJCAT NETカードFEMTOにLANケーブルを接続している。

これらの機器を使って実現できる再生スタイルは以下の4通りである。なお、「ミュージックサーバー」とは1台で「サーバー」と「プレーヤー」両方の機能を備える機器を指す。

オーディオ用PC「canarino Fils」(中央)と、Roon Server「Nucleus+」(左上)、ネットワークオーディオサーバー「HFAS1-XS20」(左下)を様々な用途別に比較した

<1>ミュージックサーバーとして使い、USB-DACと組み合わせる
(Nucleus+/HFAS1-XS20/canarino Fils)

<2>サーバーとして使い、ネットワークプレーヤーと組み合わせる
(HFAS1-XS20/canarino Fils)

<3>Roon Serverとして使い、Roon Readyプレーヤーと組み合わせる
(Nucleus+/canarino Fils)

<4>ミュージックサーバーとして使い、LAN DACと組み合わせる
(canarino Fils)


<1>ミュージックサーバーとして使い、USB-DACと組み合わせる

今、ファイル再生の主流はUSB-DACを用いるシステムだと言っていいだろう。そしてNucleus+、HFAS1-XS20、canarino FilsはいずれもUSB出力を持つミュージックサーバーとして運用可能である。USB-DACの実力を引き出すトランスポートしての性能がどれほどのものか、横一線での比較を行った。

組み合わせるUSB DACはiFI-AudioのフラグシップDAC「Pro iDSD」を用いた。


まずはNucleus+と組み合わせる。Nucleus+はRoon Serverなので、操作はRoon Remoteから行う【図:USB-DAC(1)】。

「Nucleus+」にUSB-DACを組み合わせて再生

以前に本誌試聴室で聴いた際の印象と相違ない、元気が良く溌剌とした音だ(関連ニュース)。試聴室で比較したノートPCの印象を持ち出すまでもなく、ノイズ感の少なさといい音の伸びといい、オーディオ機器としての資質を立派に示している。時として元気が良すぎて音が暴れる傾向を感じなくもないが、この辺りは一般的なPCでは得られないエネルギー感の豊かさと好意的に受け止めるべきだろう。今回Nucleus+は付属の電源アダプターを使用しており、これを良質なアナログリニア電源に交換することで、より繊細な表現力が得られるとも考えられる。

続いて、HFAS1-XS20との組み合わせ【図:USB-DAC(2)】。fidata/SoundgenicのサーバーはOpenHome対応のネットワークトランスポートとしても機能するため、別途USB DACを用意すれば完璧なネットワークオーディオのシステムが完成する。操作には様々なアプリが使用可能だが、ここはやはり純正アプリのfidata Music Appを使うべきだろう。

「HFAS1-XS20」にUSB-DACを組み合わせて再生

粗さが取り払われ、情報量が増して音に繊細さが宿る。元々Pro iDSDは筋肉質で引き締まった音を出すDACということもあいまって、柔と剛の表現が両立した見事な音を聴かせる。ボーカルは後述するcanarino Filsと比べてもなめらかであり、サーバーにとどまらない本機の実力を示す格好になった。

次ページサーバーとして使い、ネットワークプレーヤーと組み合わせる

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