小原由夫氏の自宅でAV性能をチェック
パイオニア「UDP-LX500」をレビュー。UHD BDから引き出されたあふれ出るような情報量
サラウンドサウンドも素晴らしい。『ダンケルク』では、独軍のメッサーシュミットと英国軍のスピットファイアの空中戦で、チャンネル間の旋回音がきれいにシームレスにつながる。それぞれのエンジン音の違い、機銃の口径の違いも鮮明で、対角線に突き抜ける銃声の軌跡は切れ目なくスピーディー。また、魚雷命中後に沈没する船の轟音も重々しく響いた。
『オリエント急行殺人事件』では、汽車の走行音の迫力が凄く、雪崩をもろに受けて脱線するシーンでの全チャンネルを駆使した軋み音が凄まじかった。セリフのボディ感も厚みがあって好ましい。
■「ダイレクト機能」「ZERO SIGNAL端子」は音楽ディスク再生に必須だ
CD試聴はまず井筒香奈江の『Laidback2018』から、「リトルウィング」を聴いたが、イントロのフェンダージャズベースのソロがとてもリアルに響いたのに驚いた。井筒独特のウィスパーヴォイスも艶っぽくて滑らか。子音のニュアンスは、舌や唇の動きを彷彿とさせて生々しい。
CD/SACD再生では、本体前面パネルの「ダイレクト」ボタンを押すことで、より高品位な音が叶う。具体的には、デジタル音声出力とビデオ出力が遮断され、アナログ音声の品位が上がるのだ。
また、背面パネルにある「ZERO SIGNAL」端子は、本機とAVアンプとをつなぐことでグラウンドレベルが揃って電位差が抑えられるというパイオニアの独自機能。この端子とAVアンプの空いている(使わない、接続しない)アナログ信号端子を接続することで、画質・音質のS/N感や情報量のアップが期待できる。
この2つの機能を働かせて井筒のCDを再生すると、声の質感が一段と生々しくなって、グッと前に出てくるような印象に変わる。また、ベースのリヴァーブも一層豊かになり、消えぎわの様子がより細やかに聴こえるようになった。CD/SACD再生時には、この2つの機能は必須と思う。
SACDは『ルーセル:バッカスとアリアーヌ:山田和樹、スイス・ロマンド管弦楽団』の第1章で、若々しく躍動的なメロディー/リズムが堪能できた。リズムを刻むコントラバスに支えられ、弦と管が織り成すメロディが鮮やか。オーケストレーションには緻密さがあり、スピード感と力強さがいい。
BDP-LX500は、総合的な性能でたいへん満足度の高いマシンだ。これさえ所持していれば、あらゆる12cmディスクの魅力を存分に楽しむことができそうである。
(小原 由夫)