<山本敦のAV進化論 第168回>
2018年版「ウォークマンAシリーズ」新旧対決! 飛躍を遂げた音質、機能も含めた完成度に太鼓判
若林氏の説明によると「レコードプレーヤーとスピーカー、リスナーとの位置関係を解析したうえで、導き出した音響フィードバックをDSP処理によって再現する」という、複雑なことを行っているらしい。
「バイナルプロセッサーではトーンアームの低域共振、サーフェスノイズやスクラッチノイズなどを “いい音” を感じるために有益な音楽情報として捉えています。その上で、ヘッドホン・イヤホンのドライバーなど振動系の初動感度特性を高める効果を引き出すための要素として活用しています。結果はポータブルリスニングでも、まるでスピーカーで聴くレコード再生のような、オーディオルームの空気感も味わえるユニークな機能になっています」と若林氏は語る言葉に力を込める。
ウォークマンのホーム画面からEQ設定に遷移して、画面を横にスクロールさせるとイコライザーの隣に「バイナルプロセッサー」のメニューが見つかる。これを「オン」に切り替えると、S/Nが向上して音場の見晴らしがグンと良くなった。
ノイズ成分が入っているのにS/Nがよくなるというのは何とも不可思議な気もするが、とにかく耳の奥、体全体で感じている音楽がすっきりと見晴らしも良くなるのだ。これに伴って演奏の一体感が増して、歌声や楽器の音に体温感がみなぎってくるような手応えもあった。
実はバイナルプロセッサーは先ほど紹介した超弩級デジタルミュージックプレーヤーのDMP-Z1にも搭載されていて、トーンアーム・レゾナンス/サーフェスノイズ/ターンテーブルフィードバックという3つの音響効果を選択できるようにもなっている。NW-A50シリーズでは全体のオン・オフしか選べないが、それでも効果はわかりやすく、誰もが存分に楽しめるはずだ。
Bluetooth送信モードを除いて、有線によるヘッドホン・イヤホン接続とUSB-DACモード、Bluetoothレシーバーモードで楽しめる。ハイレゾを含むどんな音源を再生している時でも効果があるので、音楽再生が楽しくなってくることうけあいだ。
■スマホで楽しむ音も「ウォークマン品質」に変わるBluetoothレシーバー
そして最後に紹介するウォークマンの新機能が「Bluetoothレシーバー」である。まずはなぜBluetoothによる「送信」だけでなく「受信」のための機能が必要だったのだろうか? 辻氏に企画意図を聞いた。
「以前ユーザーの方から、せっかくウォークマンを持っているのに配信音源やYouTubeを楽しむ際、音質的に不満なスマホに切り替えなければならないことが残念というフィードバックをいただきました。それを解決するため色んなアプローチを思索した結果、Aシリーズのサイズ感とバッテリーの持続時間、さらには販売価格に影響を与えることなく、スマホのコンテンツを良い音で聴ける手段がBluetoothレシーバー機能でした」(辻氏)
ホーム画面のアイコンをタップすると、Bluetoothレシーバーの開始を聞かれるので「OK」をタップする。あとはスマホやPCなどの機器からBluetooth設定を開いて、NW-A50シリーズを選択するだけだ。スマホの音をサポートするというコンセプトが明快なだけでなく、操作性がとてもシンプルな本機能には好感が持てる。これならば多くのユーザーが繰り返し使いたくなるだろう。
一度レシーバーとしてウォークマンを設定してしまえば、次回以降は自動的にスマートフォンにつなぎにいく。レシーバー機能のコーデックはLDAC/AAC/SBCに対応しており、接続中のコーデックは画面に表示される。この画面を抜けて本体設定に移動すると「各種音質設定」が選べるようになっている。ここでイコライザーとしてDSEE HXやバイナルプロセッサーなどを選択してもいい。音ものをすべて最適化して載せた「ClearAudio+」もある。レシーバー再生品質は音質優先/接続優先が設定可能。接続優先にするとSBCになる。切り替えてみると音質には確かな違いが現れた。
なおウォークマンを介して送受信ともにBluetoothで行うことは不可である。必ずウォークマンからのリスニングは有線のヘッドホン、またはイヤホンが必要だ。