長時間テストで完成した万能セッティング
“全部入り” REGZA「Z720X」で、どんなソースも高画質に観たい? その願い、画質のプロが叶えます
さて筆者は、前回の記事において、65X920の映像モードは「映画プロ」と「ライブプロ」だけあればOKで、しかも調整要らずと書いた。ではZ720Xはどうか?今回は55型での検証だが、残念ながらそんなに甘くはなかった。その理由はやはり有機ELにはない、液晶ならではの様々なウィークポイントの存在だ。
黒浮き、色被り、残像、バックライトの光漏れ等々…。挙げればキリが無いが、デバイスの長所を活かす方向でチューニングする有機ELテレビと、短所を目立たなくする方向でチューニングする液晶テレビでは、目指す画質は同じでもアプローチの仕方は真逆と言ってもよい。
試しにZ720XとX920の「映画プロ」モードを横並びで比較してみると、Z720Xは赤味が強いものの、デイシーンの印象は意外なほど似ている。デバイスが違うのに、このあたりのまとめ方はさすがだ。
しかし、ひとたびナイトシーンになると両者は全く別物となる。Z720Xの方が全体的にかなり暗くなってしまうのだ。なぜか。それはLEDバックライトを消さざるを得ないからだ。 いわゆる「ハロー現象」が起こるのを防ぐためである。いくら直下型ローカルディミングであっても、暗いシーンの中で光の当たっている部分だけをピンポイントに照らすことは出来ない。液晶テレビのダイナミックコントラストが有機ELに遠く及ばないのはこのためだ。
そんな時は「ユニカラー」をプラスに調整しよう。すると明部だけの輝度が上がって、相対的に全体のコントラスト感は高まる。いろいろと実験してみたが、Z720Xの「映画プロ」モードをX920ライクにするには、この方法が最も効果的だった。
ところが「ユニカラー」は上げすぎるとハイライトが白飛びしてしまう諸刃の剣でもある。そのため、再生するタイトルの輝度特性に応じて毎回調整しなければならず、とてもじゃないが、これがスマートな解決方法とは言い難い。第一、私の友人知人たちに「映画を観る時は、部屋を暗くして、映画プロにして、ピュアダイレクトをオンにして、作品に合わせてユニカラーを上げて…」なんて言ったところで、多分誰もやらないだろう。
ここまで書いておいて何なのだが、そもそも液晶テレビ vs 有機ELテレビという画質レビュー自体がナンセンスだと思う。Z720Xはもっとカジュアルに使ってこそ真価を発揮するテレビなのだ。
もちろん「おまかせ」モードを使うという手もあるが、そこは“画質調整魔”の筆者である。どうせなら放送系からパッケージソフト、配信サービスに至るまで、全ての映像コンテンツに対応可能な映像設定を作ってみたい。「購入したらこの設定を入れるだけ」。それなら皆もやってくれるはずだ。