フラグシップのノウハウを惜しみなく投入
デノンのミドル級AVアンプ「AVR-X4500H」レビュー。力強さと静寂感を手中にした高コスパモデル
機能面では、同社のHEOSテクノロジーを搭載し、Wi-Fi対応でネットワークオーディオにもフル対応。ハイレゾネットワークオーディオ再生はもちろん、SpotifyやAWAといった人気音楽ストリーミングへの直接アクセス、インターネットラジオ「tune in」の利用、そして宅内配信(マルチルーム)も可能にしてくれる。
全ての操作はスマホやタブレットのアプリから可能で、優れた音質クオリティーとあわせて、まさに最新のAVセンターとして注目したいモデルである。
■クラス最高峰のダイナミズムが楽しめる優れたS/Nとパワー
プレーヤーはOPPO「UDP-205」をHDMI接続し、スピーカーはELAC「240 BE LINE」で7.1chを構成してサウンドを確認した。
まずは音楽重視で『ラ・ラ・ランド』の「Another Day of Sun」。人気でお馴染みのシーンながら、コンプレッションが効き過ぎているのか音源としてのS/Nは今ひとつで、ハイファイ環境で再生するのは辛く感じていた。
ところが本機は静寂性が高くフロアが1段下がることでメリハリが効いて聴き映えする。また表現力の点では、女性がソロで語るように歌う場面への移行時、動から静への移行がダイナミックで映像にぐっと惹き込まれる。ほか、全体的に高音量が続いても、制動力を伴ったドライブ力の高さにより、引き締まったキレのよい低域がスピード感を増して心地良い。
質の面では、チャプター5、夕暮れの坂道で心地よさをしみじみと体感。街を望む背景にダンスが映える印象的なシーンは、男性ボーカルが力強くもテクスチャが豊か、かつ音離れが良い。ハイファイ的な設計アプローチが功を奏していることが理解できた。
アクション映画として、『ワンダーウーマン』のチャプター2を視聴。歪みの少ないクリアな音が印象的だ。それは音の透明感、音場の透明感から感じるもので、マルチチャンネルで重要な空間の見通しの良さに繋がっている。例えば、鳥のさえずり、木の葉が風にそよぐ音、そしてそれらの微少な響きから、空間としての森が遠くまで広がる様子が感じられ、映像の世界に没入させてくれるのだ。
とにかく静かでS/Nが高く、力強くも歪み感のないセリフはまさに映画サウンド。静寂からセリフのような常音量、常音量から爆発するような大音量シーンへと移行する際の立ち上がりが鋭くかつスムーズで、クラス最高峰のダイナミズムが楽しめた。
全体を通じて、“静かなアンプ”が奏でる中高域もクリスタルクリアな美音は好印象。大音量時の突き抜けるようなパワー感も圧巻で、どのシーンもコントラスト豊かに描かれ、心を揺さぶられた。
チャンネル間の繋がり、距離感、広がりなど、位相の正しさもこのクラスならではと思えるもので、大音量で負荷をかけ続けてもパワー垂れや位相回転のような素振りは見せず、安心して楽しめるのも頼もしい。9ch同一構成の高品位なパワーアンプの成せる業だ。
■ステレオ再生でも低域の力感やキレの良さを見事に再現
本機の素の音質を確かめるため、USBメモリーに格納したハイレゾ音源で2ch環境の音質も確認した。
最初は高中正義の『Blue Lagoon』(96kHz/24bit FLAC)。音源自体はレンジがあまり広くなく平面に聴こえがち。言い換えると質としてはあまり良く無い。本機で再生すると、静寂性の高さがS/Nをアップし、限られたレンジの中でも躍動感を生み出す。表現としては、スッキリ淡々と刻むリズムのスピード感が実に心地良い。
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