<山本敦のAV進化論 第170回>
音質が劇的進化、Amazon新「Echo Plus」「Echo Dot」はどちらも “買い” で間違いない!
Echo Plusは、Echo Dotを4個半重ねたぐらいの大柄なエンクロージャーに2つのスピーカーユニットを搭載しているので、当然ながら鳴りっぷりはEcho Dotよりも数倍は力強く、音のつながりも滑らかで余裕がある。360度方向へ音の広がりもおおらかで、音質は想像以上に良かった。
山中千尋の楽曲は、電子ピアノが織りなす和音がますます濃厚で味わい深い。質感がとてもシルキーで、音に心地よい熱がこもっている。ウッドベースの弦がダイナミックにしなり、ボディがうなりを上げるパワフルな低音も文句なし。
我が家のリビングだと、本機もやはりMAX10のうち3〜4あたりのボリューム位置で十分に骨太なサウンドが楽しめた。特に低音は、集合住宅の場合はこれより音量を大きくしてしまうと近所迷惑にもなりかねない。モバイルアプリのイコライザーから低音を絞るなど調整してみるといいだろう。
Echoシリーズのスマートスピーカーで音楽をしっかりと聴きたいという方には、値段が3倍近くしてしまうが、Echo Plusの方が音質的にはおすすめだ。置き場所さえ許せばではあるが、オーディオブランドのワイヤレススピーカーと比べてもサウンドは引けを取らないし、スマートホーム対応も幅広い。純正モデルなので、Alexaの進化をいち早く追いかけられるのも良い。
どちらのEchoも、Bluetooth接続してのワイヤレス再生が可能。オーディオプロファイルはSBCのみ対応している。一度ペアリング登録した後は「アレクサ、スマートフォンに接続して」と呼びかけると次回以降の接続が簡単だ。
さて、Echo Plusが上位モデルである理由は、ZigBee規格対応のスマートホームハブ機能が内蔵されていることと、第2世代機から新しく温度センサーも搭載したからだ。温度センサーについては「アレクサ、部屋の温度を教えて」と話しかけると現在の室温を答えてくれる。日本ではまだスマートホーム/IoTデバイスのワイヤレス接続にWi-Fiを使うことが多いが、消費電力が小さく中継機能も持つZigBee端末も徐々に増えているようだ。
ふたつのスマートスピーカーの発売にあわせたのか、Alexa周辺サービスも強化が図られた。オーディオビジュアル関連で最も大きな出来事は、音声操作も可能なメインの音楽ストリーミングサービスにSpotifyが加わったこと。筆者もSpotifyユーザーなので、これは驚喜した。
スマートテレビ連携は、ソニーのブラビアと東芝のレグザが、スキルを追加することで、音声コマンドによる操作が可能になった。筆者宅では、今回のアップデート対象のAndroid TV搭載ブラビアを使っていたので、これもすぐにセットアップして便利に使っている。
また少し前のことになるが、複数のEchoシリーズによるマルチルーム再生も可能になった。現在はEchoシリーズだけでなく、SONOSのAlexa内蔵スマートスピーカーも輪に加わったようだ。またボーズは「Bose Home Speaker 500」など、Alexaビルトインのオーディオ製品をこの秋に発売した。
9月にIFA2018を取材した時には、Polk AudioやクリプシュがAlexaビルトインのスマートオーディオを展示していた。またこれからは、デノンやマランツのHEOS搭載機、ヤマハのMusicCast対応製品のように、スキルでAlexaに対応するケースも増えてくるだろう。
筆者も自宅で毎日Echoシリーズを使っているが、9月初めに2台のEcho Spotでビデオ・音声通話ができるようになった頃から(関連ニュース)、Alexaの反応が少し賢くなったように思う。例えば「アレクサ、君が好きだ」と話しかけると「えへッ」と答えてくれたり、ちょっと気の利いたトークができる。
反対に「TuneIn=チューンイン」など、ベタ読みな「日本語っぽい英単語」を正しく聞き取ってくれないことが増えたように感じている。「アレクサ、チューンインラジオをかけて」とお願いしても「ちょっとよくわからなかったです」「チューンインという楽曲がAmazonミュージックで見つかりませんでした」と返されることが増え、「前回聴いたステーション」になかなかたどり着けないストレスがある。仕方ないのでスマホのAlexaアプリから定型アクションを作って、よく聴くステーションを登録した。改善して欲しい。
Alexaに関連するサービスでは、オーディオブック「Audible」(関連ニュース)も楽しいが、12月にEcho Showが発売されたら、ついにAmazon Prime Videoがスクリーン付きEchoで見られるようになるらしい。ブラウザからアクセスすればYouTubeも視聴できるというから楽しみだ。
現在もEcho Spotにエムキャスのスキルを入れると、TOKYO MXや群馬テレビの放送が視聴できる。今後、放送局系サービスとスクリーン付きスマートスピーカーとの関係も深まるだろう。TVerあたりが対応して欲しいと思う。さらにはGoogleやLINE、Facebookなどが、対抗馬となるスクリーン付きスマートスピーカーをいつ、どのような形で日本国内に投入してくるのかも引き続き追いかけたい。
鮮やかで力強いサウンドに生まれ変わった、今度のEchoシリーズはどちらも「買い」の製品だと思う。これはオーディオ専業メーカーもうかうかしていられないだろう。
(山本 敦)