キーマンが詳細を解説
クアルコム「aptX Adaptive」体験会レポート − Bluetoothの未来を担う新コーデックをいち早く聴いた
aptX Adaptiveの技術詳細に関しては、講師を務めた鴻池氏が本イベントの内容も踏まえて執筆した解説記事をすでに公開しているのでぜひご一読いただきたい。ここでは要点をおさらいしたい。
aptX AdaptiveがこれまでのaptXと大きく異なるのは、伝送時のデータ圧縮方式に固定圧縮(CBR)ではなく、可変圧縮(VBR)を採用した点だ。さらに、このVBRとは別に、周囲の無線環境と再生するコンテンツに応じて、ビットレートを279〜480kbpsの間で動的に変化させることで、より音切れに強くなっている。
接続を優先した低ビットレートの状態でもCD並の音質を維持しており、切り替わりの違和感もほぼ無い。また520kbpsのaptX HDと比較して最大ビットレートは低くなっているが、優れた効率のデータ圧縮により同等の音質を実現しているという。
音質面ではさらに、音響工学のトレーニング・プログラムを実施している英サルフォード大学と連携し、数値だけではなく聴感上の性能を追求した。例えば演奏家を含む30人ほどのオーディオエキスパートが96kHz/24bit音源で有線オーディオとaptX Adaptive搭載オーディオの音を聴き比べ、差がわからないレベルになるまで追い込む、というような調整を行ったという。
低レイテンシー化の取り組みについては、コーデックの処理の部分にとどまらずシステム全体から手を入れており、Snapdragon 845を搭載した端末では50〜80msまで抑えている。これは近年プレイ人口を大きく伸ばしているスマートフォンなどの「カジュアルなゲームタイトル」であれば、ほぼ音ズレを気にせずプレイできる数値だという。
aptX Adaptiveに対応したイヤホン/ヘッドホン向け無線チップは今年9月から出荷、Android 9スマートフォン向けのaptX Adaptiveエンコーダーは今年末に提供を開始する予定。つまり、ベストパフォーマンスを発揮するにはSnapdragon 845以降が必要だが、非搭載端末でも後からaptX Adaptiveに対応できるということだ。
マクリントック氏はaptX Adaptiveにより、オーディオリスニング、映像視聴、ゲームなどあらゆるコンテンツに応じたベストな音質を提供できるとし、ことオーディオ分野においては「有線接続に匹敵する接続安定性、音質を実現できる」と語った。
次ページ評価基板で実演されたaptX Adaptiveの動き