“2000Ti”シリーズ3モデルを連続試聴
オーディオテクニカ「ATH-AP2000Ti」レビュー。表現力を磨き上げたチタンボディ採用プレミアムヘッドホン
ケーブルは確実なコンタクトを約束するA2DCコネクターを採用しており、なおかつL/Rのグラウンドを分離したスターカッド撚り線ケーブルとした。6N-OFC両出し1.2mバランスケーブルと、3.0m/1.2mコードが付属する。
おむすび型のキャリングケースは、本体がスウィーベル機構でないため、下側が少々厚めのサイズに仕上がっているが、内部にケーブル用の小さいポーチが収められた二重構造になっており、使い勝手はひじょうによい。このケースも、イヤーパッド/ヘッドバンドと同じシープスキン製で、高級感がある。
■引き締まった高域再現を持ち味に、リッチな低音まで偏り無く再生
ほのかなソリッドネスを湛えたフラットかつワイドレンジなサウンドが本機の持味だ。偏った帯域がなく、S/Nが高くてセパレーション良好に感じられるのもチタンハウジングの恩恵とみていいだろう。
それでもアクセントとして感じられる本機の個性は、カチッと引き締まった高域の質感再現で、シンバルやピアノの高いキーの実体感が鮮烈。解像力の高さもあり、ハイレゾ音源のハイレゾらしさが克明に実感できる。
ヴォーカルは、井筒香奈江『Laidback 2018』から「Little Wing」を聴いたが、耳元で囁かれているようなウィスパーヴォイスをリアリスティックかつ緻密に響かせ、首筋がゾクッとする感覚を味わった。加えて、ヴィンテージのフェンダー・ジャズベースが繰り出す冒頭のベースソロが、実に豊かに、太く、ナチュラルなリヴァーブ感を伴って響いたのには驚かされた。このリッチな低音感が屋外でも楽しめると思うと、ATH-AP2000Tiの価値がグッと高まったように感じられるのである。
アンドリス・ネルソンス指揮、ボストン響の『ショスタコーヴィチ:交響曲第4番』の第1楽章、不吉なメロディーのアンサンブルを丁寧に描写しながら、強烈なグランカッサの一撃をがっちりと再現した。
そうかと思うと、ダイアナ・クラール『ターン・アッブ・ザ・クワイエット』の「L.O.V.E.」の艶っぽい声をグラマラスに浮かび上がらせる器用さもある。伴奏と一体化したスウィング感も申し分なく、ピアノの旋律がきれいに紡ぎ出されて、このヘッドホンの非凡な一面を垣間見た思いがする。
先の述べたことの繰り返しになるが、オーディオテクニカはハウジングにチタンを用いたヘッドホンをこれまで数多く手掛けてきている。しかし、そこに最新のパーメンジュール磁気回路等を組み合わせ、最新のメソッドを採り入れたことで、ATH-AP2000Tiはこれまでとは異なる、一皮剥けたソノリティと、新たなクオリティ感を達成していることがこの試聴でよくわかった。
(小原 由夫)