【特別企画】USB入力搭載のPCスピーカー最高峰
最小スペースで最高水準のサウンド。クリプトンのアクティブスピーカー「KS-55」でニアフィールド再生を堪能
続いてMacBook Proの背後、頑丈な棚を想定して、ガラス台の後ろへスピーカースタンドを設置。その上へKS-55を置くが、左右スピーカーの距離は86cm。左と右、それぞれのスピーカーから試聴ポジションまでも86cmの位置で聴くことにする。なお、水平方向の角度については耳の方向に合わせてやや内振りにセットした。
まずは付属のスピーカーベースがない状態の音を確認するために、スピーカースタンドの上へアルミ製エンクロージャーをそのまま置いて再生した。伸び良くバランスの良い傾向はガラス台で確認したときと同じ傾向だ。ただ、スピーカー位置が高くなったことや内振りにしたこともあり、音像のフォーカスの良さ、密度感、音場の見通しの良さは高まったようである。
■ベストセッティングで、立体的な定位やスピーカー外側まで広がる音場感が得られる
改めてスピーカーベースをセットすると、低域方向の引き締め効果が高まり、音像の輪郭が鮮明に浮き立ち、分離良くくっきりとしたサウンドへと改善。内振りなことで中央に定位した音像には密度感があるが、合わせて適度に広がりのある、見通し良い音場表現が得られている。さらには、低域から高域まで伸びやかで余裕を持った響きを実感できた。
オーケストラの描写はS/Nの良さが際立ち、小音量でも微細なパートの浮き立ちや管弦楽器のハリの良さがすっきりと聴き取れ、ローエンドの響きも締まり良く、余韻の広がりもクリアに表現。ホールトーンの繋がりも滑らかで、位相表現に優れたリアルなハーモニーを味わえた。
ジャズ音源においてもこのリアル志向が反映されており、演奏前のカウントから立体的に楽器の位置を捉えることができる。ホーンセクションの息継ぎもハキハキとして、描写も鮮度良く前へせり出す。シンバルの響きもクリアで輝きよく、ピアノのアタックも朗らかで、アンビエントの残響感も自然に表現する。ウッドベースはタイトに胴鳴りを引き締め、弦の艶良いタッチを付帯音なく描いてくれる。やはり音像の定位が立体的で、スピーカーの外側まで音が広がる臨場感、躍動感に溢れた音場表現を楽しめた。
ポピュラー音源においてもリアルできめ細やかなサウンドは実感できるが、特に女性ボーカルに着目したい。声の艶やかさやクールな口元の潤いを克明に描き出し、余韻の伸びやかさ、リヴァーブの階調も妥協なく表現してくれる。ロック音源のリズム隊もアタック&リリースが正確で、ドラムの密度感も引き締め過ぎずちょうどよい厚みを持つ。エレキギターのリフも小気味よいクリアさで、ボーカルの輪郭も分離良くまとめ、リヴァーブ成分との描き分けもはっきりと掴める。滲みのない澄んだ描写性であり、小音量でもメリハリ良く楽しむことができた。
ハイレゾ再生で重要となる音場のシームレスな定位感、音像の分離度と余韻の階調性の細やかさ。そうしたいくつもの要素を丁寧に追及し、適切な駆動力と強靭な筐体によってコントロールし、音波として放つ。基本がしっかりとしているからこそ、音源を選ばずリアルなサウンドを聴かせてくれるわけであるが、KS-55ではシリーズがこれまで積み上げてきたノウハウをすべて踏襲したことで、サイズを超えた空間表現力を獲得している。
ただ量感があるだけでなく、抑揚良く細部を表現できる、余裕あるサウンド性も魅力の一つだ。PCと本機だけで楽しめるハイレゾサウンドは、慣れ親しんだ楽曲であっても聴くたびに新たなことに気づけるほど、深掘りした緻密な表現に溢れている。KS-55は上位モデルから培った技術を凝縮し、小音量でも立体的な空間性と粒立ち細かく明瞭な音像が楽しめるようにした、ハイレゾ・アクティブスピーカーの新たなスタンダードモデルといえるだろう。
(岩井 喬)
■試聴音源
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身による2.8MHz・DSD録音)
・シカゴ『17』〜ワンス・イン・ア・ライフタイム(192kHz/24bit)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源(5.6MHz変換したファイルを使用)
※DSDファイルは再生ソフトウェア『Audirvana』上でPCM変換
<イベント情報>「KS-55」がポタフェスで試聴可能
12月15日・16日の2日間にわたって秋葉原で開催される「ポタフェス」(公式サイト)。同イベントにてクアルコムのブースに「KS-55」が出展。実際にその音を聴くことができる。ぜひ自身の耳でもそのサウンドを確かめていただきたい。
特別企画 協力:クリプトン