【特別企画】リナーロ社との出会いによって完成
MEZE AUDIOの最高級ヘッドホン「EMPYREAN」を聴く。世界初ドライバーが誘う “最高天” サウンド
「あなたが言う、そういった意味合いもあるが、実は私の好きなギタリスト、ジョン・フルシアンテのアルバム『ザ・エンピリアン』をリスペクトして付けた」のだという。
聞くところによるとメゼ氏はフェンダーのエレキギター「Stratocaster」をこよなく愛しているらしい。ジョン・フルシアンテもレコーディングやステージで様々な名機を弾きこなすギタリストだが、中でもサンバーストカラーのストラトキャスターは彼のトレードマークにもなっている。自分の好きなものをひたむきに探求して形にできたメゼ氏がとても眩しい。
■「等磁力ハイブリッド配列型ドライバー」を採用
EMPYREANは開放型のハウジングを持つ平面駆動型のヘッドホンだ。最大の見どころはリナーロが世界で初めて開発した「等磁力ハイブリッド配列型ドライバー」である。
楕円形の振動板にはふたつのパターンが異なるボイスコイルがプリントされている。振動板を縦に構えて、上のスイッチバック(ジグザグに折り返した模様)側が低域、下のスパイラル(円形)側が中高域をそれぞれ受け持つパートになっている。ボイスコイルのパターンに目を凝らすと一筆書きのようにひと繋がりで成形されていることがわかる。リナーロではこの構造を「ハイブリッド配列型」と呼んでいる。
ふた通りにパターンを変えている理由は、それぞれが得意とする周波数帯域を効率よく鳴らすためである。上下の配置は、特に中高域の音を減衰させることなく耳へ届けられるよう、ドライバーに組み込んだ時に耳から近いポジションにスパイラル側のボイスコイルを置いた。
高音質化のため、物量を投入すると分厚く・重くなりがちな高級ヘッドホンをできるだけ軽くして、快適な装着感を実現するため、振動板の基板には特殊なポリマー素材を使っている。軽さと堅さの特長を併せ持つ素材だ。不要な音の歪みを生まないようにシェイプも楕円形としている。最終的にEMPYREANに搭載されたドライバーは再生周波数帯域が4Hzから110kHzまでのワイドレンジをカバーする。歪率は全体周波数のわずか0.1%にまで抑え込んでいる。インピーダンスは約32Ω。様々な再生機器と組み合わせて鳴らしやすいヘッドホンである。
本体のシャーシにはアルミブロックから贅沢に削り出したパーツを使っている。塗装は落ち着いた高級感を漂わせるガンメタルブラック。音質に悪い影響を与えないレベルの限界まで軽量化を図ったことで、見た目にはやや大柄なヘッドホンでありながら質量は約430gとしている。振動板の前後にマグネットを配置したドライバーは片側の質量を約67gにまで抑え込んだ。その他のパーツも徹底的に計量化を追い込んできた。
さらにレザーヘッドレストが伸縮しながらフィットして、頭にかかる不快なプレッシャーを逃すセルフアジャスト方式の「サスペンションウィングヘッドバンド」は特許出願中の技術だ。EMPYREANの軽快さは手に持った時よりも、頭に身に着けてみるとさらによくわかる。
またEMPYREANは着脱式イヤーパッドを採用している。パッケージに同梱される2種類の素材が違うイヤーパッドを、ユーザーが簡単に交換できるマグネットによる着脱方式を採用した。イヤーパッドの表皮の素材は本革、または化学繊維のアルカンターラ。それぞれの音の違いはこの後のリスニングレポートでコメントを加えたいと思うが、このイヤーパッドが実はEMPYREANによる音楽リスニングにも重要な役割を果たしているのだ。
イヤーパッドには吸磁性質を持つ金属ネットが組み込まれていて、これがEMPYREANが搭載するドライバーの強い磁界に吸い付いて固定されている。この金属ネットはヘッドホンを身につけたユーザーの人体に悪い影響を与える可能性のある余分な磁界を遮ったり、振動板から発生する不要な振動をコントロールする役割も担っているのだ。
さらに、プレミアムクラスのヘッドホンではもはや必須とも言えるリケーブルも手堅くサポートしている。ヘッドホン側の端子は4ピンXLRになる。