【特別企画】複数ケーブルの違いをチェック
電源ケーブルで “画質” も大きく変わる! 「オカルトじゃない変化ぶり」をサエクのケーブルで検証
SAECの「PL-7000」は導体にオーディオ信号伝送用としても注目を集めているPC-Triple Cを採用。連続鍛造延伸技術により、素材の結晶を長手方向に整えるという凝った製法で、電源ケーブルとしては何とも贅沢に感じる。
PL-7000ではピークが伸びてダイナミックかつ、明部の階調も粘りを増す印象。至近距離で画素に注目すると明部は動的な粒状ノイズが立ったように見えるがキレが良く、適正視聴距離では解像度がアップしたように見える。暗部はざわつきに繋がるノイズが低減してしっとりと落ち着き、暗部の奥行き情報が見えてくる。路地や夜空の奥行きなどに注目すると良いだろう。
色はザラツキが濃く感じさせるというよりは、雑味が抑えられて純度が増す方向で、ルックとしてシルキーに感じる。総じてコントラストや輪郭で先鋭度を増しつつ、階調がスムーズかつ濃厚でリッチな画調になる。
こうした画質アップと感じられる要因は、ランダムに生じる粒状ノイズの変化かもしれない。例えば100%の白部分にノイズが現れるということは輝度の低下を意味し、0%の黒部分にノイズが現れるということは輝度の上昇を、また、トータルの明暗表現としてはコントラストの低下を意味する。コントラストの低下は、周波数が高い高解像度な画柄では、境界が曖昧になる方向に向かい、解像感の低下に繋がる。色においては純度の低下を意味する。
最後のSAEC「PL-8000」は、導体にPL-7000と同じくPC-Triple Cを採用しつつ、面積が5.5SqとPL-7000(3.6Sq)よりも広く、ケーブル全体としては直径が15mmとPL-7000の13mmよりも太い。さらに絶縁体やシースに振動抑制を目的とした素材を使っているのも、今回のテーマからは見逃せないポイントだ。
画質もPL-7000に非常に近い印象だが、明るいシーンのピーク階調がさらに粘る印象。PL-7000のようなダイナミックさに繋がるピーク感は減少するが、画としては情報量が多く密度感がアップしてリッチな雰囲気を醸し出す。いっぽう、夜景シーンは、闇が吸い込まれるように落ち着き、その対比でネオンの輝きが力強くダイナミックに感じられる。S/Nが高くレンジの拡大を感じるルックだ。
解像度面では、コントラストアップが明暗の境界を明瞭にする方向に働いたのか、本作品では解像度が純増したように感じた。暗部の色表現が豊かになる効果も実感。サリーの濃紺のジャケットや表情の肌色の繊細な変化も豊かに映る。シーンの変化、特に夜間から日中への切り替わりもダイナミックに感じられるから不思議だ。
今回ケーブルの交換によって上述のような印象を受けた。電源ケーブルの交換は、信号ケーブルの交換ほど劇的な変化や向上を望めないが、UB9000クラスのプレーヤーを手に入れれば、究極を際限なく追い求めるのがマニアの信条であり、その価値はプライスレス。信号ケーブルの吟味を終えたら、電源ケーブルにもチャレンジして楽しんでみては如何だろうか。
(鴻池 賢三)