[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域:第222回
イヤホン&ヘッドホン素材辞典[アコースティック編]金属・合成樹脂・新素材まるっと総まとめ!
▼ジェラルミン “実はアルミ合金の一種”
種属:金属 別称略称等:ーー
使用箇所:ハウジング、フレームなど
特性 金属内での相対評価
頑強性 柔|・・|■・|硬
比重 重|・・|■・|軽
加工性 難|・・|■・|良
特別な名称を持っているが実は、アルミニウムを主成分に銅、マグネシウム、マンガンを加えたアルミ合金の一種。比率を変えたり亜鉛を加えたりした超ジュラルミン、超々ジュラルミンもおおよそ同系統の性質。おおまかには「アルミ合金の中でも特に頑強な一群」といった理解で問題はない。
▼ジルコニウム合金 “指輪にも使われる宝飾性”
種属:金属 別称略称等:ジルカロイ
使用箇所:ハウジング
特性 金属内での相対評価
頑強性 柔|・・|■・|硬
重量 重|・■|・・|軽
加工性 難|■・|・・|良
ジルコニウムからは人造ダイヤとも呼ばれるセラミック素材「ジルコニア」も製造されるが、イヤホン分野での注目はジルコニウムを主とした合金素材をハウジングに採用する例。共振周波数が極端に高く、それを可聴帯域外に追い出せるという音響的利点に加えて、腐食しにくく肌に優しいこともポイント。
▼真鍮/ブラス “楽器にも欠かせない”
種属:金属 別称略称等:黄銅
使用箇所:ハウジング、ノズル、制振パーツなど
特性 金属内での相対評価
頑強性 柔|・■|・・|硬
比重 重|・■|・・|軽
加工性 難|・・|・■|良
銅合金の一種で、一般的な比率は銅65%と亜鉛35%程度。硬すぎず十分に柔軟で展延性に優れ、圧延や切削など加工性全般に優れており、それこそブラス、金管楽器のように複雑で精密な造形にも適している。オーディオにおいてはその重さと適度な柔らかさからか、制振アクセサリーの素材としても活躍。
▼タングステン/合金 “圧倒的な重さと硬さ”
種属:金属 別称略称等:ーー
使用箇所:振動板コーティング
特性 金属内での相対評価
頑強性 柔|・・|・■|硬
比重 重|■・|・・|軽
加工性 難|■・|・・|良
使用例がまだ少ないので、おおよそ同様の特性であるタングステン「合金」全般もここに含めて解説。全金属中トップクラスに重くて硬い素材で、その重さと硬さは対戦車や対艦用として、その装甲を貫く徹甲弾に用いられるほど。オーディオ全般としてはインシュレーター等への採用例が見られる。
▼チタニウム/合金 “ハイテク感溢れるロマン金属”
種属:金属 別称略称等:チタン、チタン合金
使用箇所:振動板、振動板コーティング、ハウジングなど
特性 金属内での相対評価
頑強性 柔|・・|■・|硬
比重 重|・・■・・|軽
加工性 難|・■|・・|良
比重はアルミ合金より重めだが、その割には硬度も耐久性も高く、同じ強度を得るために必要な厚み等は少なくて済む。そのため総合的には軽量性にも優れた素材と言える。純チタンはアルミ合金よりも柔らかい程度の硬度だが、アルミニウムやバナジウム等を加えた合金とすることで上記の特性を得る。
▼銅 “電気的にも欠かせない金属”
種属:金属 別称略称等:カッパー
使用箇所:ハウジング、ノズル、制振パーツなど
特性 金属内での相対評価
頑強性 柔|・■|・・|硬
比重 重|・■|・・|軽
加工性 難|・・|■・|良
鉄やアルミと並んで、真鍮や洋白、クロム銅など様々な合金の母体ともなっている重要な金属。オーディオ全般においては銅そのものも導電素材として欠かせない。イヤホン等のアコースティック部分では多用はされていないが、サウンドチューブに無酸素銅を用いた製品などもあるにはある。
▼鋼 “強靱なる鉄合金”
種属:金属 別称略称等:スチール
使用箇所:ハウジング、フレーム、ヘッドバンドなど全般
特性 金属内での相対評価
頑強性 柔|・・■・・|硬
比重 重|・■|・・|軽
加工性 難|・・■・・|良
鉄を主成分に僅かな炭素を含む合金。その炭素の量や精製手順によって、硬さや粘り強さ、加工性などが異なってくるが、総じて重さはあるが丈夫な素材。クロムやニッケル、モリブデンといった成分を添加することでも性質が多様に変化し、「クロームモリブデン鋼」「ステンレス鋼」等となる。
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