イヤホン&ヘッドホン素材辞典［アコースティック編］金属・合成樹脂・新素材まるっと総まとめ！

▼ベリリウム　“抜群の特性だが加工性に難”
種属：金属　別称略称等：ーー
使用箇所：振動板コーティング
特性　　金属内での相対評価
頑強性　柔｜・・｜・■｜硬
比重　　重｜・・｜・■｜軽
加工性　難｜■・｜・・｜良

非常に硬くしかも軽量と振動板素材として抜群の特性だが、加工性が極端に悪い。しかし近年は樹脂振動板への「蒸着コーティング」素材としての利用が急激に増加し、比較的なじみのある素材となっている。なお「ベリリウム銅合金」は銅の方を主としてベリリウムの添加で強度を引き上げてある銅合金。

▼マグネシウム／合金　“比重/強度比が高い！”
種属：金属　別称略称等：マグネシウム・アルミ合金
使用箇所：振動板、フレーム、制振パーツなど
特性　　金属内での相対評価
頑強性　柔｜・■｜・・｜硬
比重　　重｜・・｜・■｜軽
加工性　難｜・■｜・・｜良

純マグネシウムもアルミや亜鉛を加えたマグネシウム合金も、特性評価の表記を振り切るほど軽い。アルミ合金全般に強度は劣るが比重が軽く、総合的には軽く仕上げやすい素材と言える。また特に純マグネシウムは金属中で最大クラスの内部損失を備え、余計な響きを出さないこともオーディオ的な特徴。

■合成樹脂、そのほか新素材＆特殊素材
現代の工業製品を金属と同等以上に担っているのが合成樹脂、いわゆるプラスチック類だ。「プラスチック」は曖昧な区分であり、今回も多くの「いかにもプラスチックっぽい素材」に加えて、「プラスチックっぽくはないけど、広義にはプラスチックの一種とも言える素材」もここで紹介する。

▼アクリル　“イヤモニのクリアシェルといえば”
種属：合成樹脂　別称略称等：アクリルガラス
使用箇所：ハウジング、そのほか全般
特性　　樹脂内での相対評価
頑強性　柔｜・・■・・｜硬
重量　　重｜・・■・・｜軽
加工性　難｜・・｜・■｜良

透明性が高く非晶質状態の合成樹脂。水族館の分厚いアクリルガラスにも使われているように、強度や透明度など普通に優れた特性を備える。イヤホン分野では紫外線で硬化するタイプの「光硬化性樹脂/UVレジン」が活躍。カスタムイヤーモニターのシェル製作には特に欠かせない素材だ。

▼ABS　“これぞプラスチック”
種属：合成樹脂　別称略称等：ーー
使用箇所：ハウジング、そのほか全般
特性　　樹脂内での相対評価
頑強性　柔｜・■｜・・｜硬
重量　　重｜・・｜■・｜軽
加工性　難｜・・｜・■｜良

アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンから成る合成樹脂の総称であり、基本的にバランス良く、高性能な上に特性を変化させたバリエーションも豊富。溶かした際の流動性の高さから、金型成型での大量生産に非常に適していることも大きなポイント。いかにも「プラスチックらしいプラスチック」と言える。

▼液晶ポリマー　“振動板に適した高い内部損失”
種属：合成樹脂　別称略称等：LPC、リキッドクリスタルプラスチック
使用箇所：振動板、フレーム、制振パーツなど
特性　　樹脂内での相対評価
頑強性　柔｜・・｜■・｜硬
重量　　重｜・■｜・・｜軽
加工性　難｜・・｜■・｜良

融点に達すると軟化する熱可塑性樹脂のうち、溶融時の分子の並びが液晶性を示すものの総称。といった定義はさておき、イヤホン＆ヘッドホン分野においては、強度や弾性、内部損失に優れ、射出成形時の寸法誤差が少ないといった特性から様々な内部パーツで活躍する。振動板への適性は特に高い。

▼カーボンファイバー樹脂　“頑丈さでは最強クラス”
種属：合成樹脂　別称略称等：炭素繊維強化プラスチック、CFRP
使用箇所：ハウジング、フェイスプレートなど
特性　　樹脂内での相対評価
頑強性　柔｜・・｜・■｜硬
重量　　重｜■・｜・・｜軽
加工性　難｜■・｜・・｜良

合成樹脂に弾性率の高い繊維質材料を強化材として混合し複合材料とした、樹脂の軽量性とそれを超える強度を兼ね備えた新素材が繊維強化樹脂。その一つが、エポキシ樹脂等に炭素繊維を混合したカーボンファイバー樹脂だ。合成樹脂としては重く、加工性も良くないために使い所は限られ、プレミアム感もある。

▼シリコン　“実は樹脂でもゴムでもない”
種属：合成樹脂　別称略称等：シリコンゴム
使用箇所：イヤーチップ、制振パーツなど
特性　　樹脂内での相対評価
頑強性　柔｜■・｜・・｜硬
重量　　重｜・・｜・■｜軽
加工性　難｜・・｜・■｜良

「シリコン」とは、シロキサン結合による主骨格を持つ合成高分子化合物の総称であり、その中にはシリコンオイルからシリコン樹脂までが含まれるが、イヤホン＆ヘッドホン分野でシリコンといえば、主にシリコンゴム、シリコンエラストマーと呼ばれるものを指す。イヤーチップでおなじみのあの柔軟な素材。