アナログレコードのEQカーブの謎に迫る
こんなカーブに誰がした?〜麗しきイコライザーカーブの世界〜【第1回】
■ビル・ワイマンのベースが、ブンブン鳴っているではるではないか!
目からウロコ、耳からEQだった。先輩の先輩はストーンズの『アフターマス』の英国モノラル盤をターンターブルに乗せ、爆音で聴かせてくれた。30秒ぐらいで針を上げると、「良くないよね?」と言う。いちばん聴きたいところが抜けてこないような音で、迫力に欠ける。ビートルズにはとうてい敵わないサウンドだ。
「いま聴いたのはRIAAカーブ。今度はイコライザーカーブをFFRRにして、もう一回聴いてみるよ」
どっひゃ〜! だった。同じレコードとは思えないくらい艶やかに中域が鳴って、リヴァーブも膨よかだ。そして、いるのかいないのか判らなかったビル・ワイマンのベースが、ブンブン鳴っているではるではないか!
それは衝撃だった。ずっと「針金を弾いてるみたいだ」と思っていたキース・リチャーズのギターがワイルドでカッコいいし、ミック・ジャガーの吹くハーモニカは黒人のブルースマンに負けない音の太さなのである。
そういう経験があったから、季刊・analogの浅田編集長に「簡単にイコライザーカーブがつくれるフォノADコンバーターが数年前から話題なんですけど、それでいろんなレコードを聴いてみませんか?」と言われて、「やるやる!」と乗って今回の企画が実現したわけだ。
まず今回、使ってみたフォノADコンバーターは、イタリアのマルコ・マヌンタが開発したM2TECHの「JOPLIN MkIII」。LPであれあ全16通りのイコライザーカーブを一発でセッティングできるのが特徴で、その最新のモデルとなる。
するとどうだ。音を聞く限りでは、やっぱり英国DECCAのレコードは1960年代になってもFFRRカーブが採用されているようだし、1960年代の米国コロンビアの盤などもコロンビアカーブで聴いた方がRIAAカーブよりもガッツがある音がする。もちろん「必ずしも」ではないのだが……。では、傾向はあるのだろうか?
我々はこの命題に取り組むために、ここに連載ページをつくり、さまざまなレコードを聴いてみることにした。題して「こんなカーブに誰がした?〜麗しきイコライザーカーブの世界〜」。これから数回にわたり、連載として掲載するので、お楽しみいただきたい。
ちなみに次回は、M2TECHを扱うENZO j-Fi,LLC.の菅沼洋介氏をお迎えして、JOPKIN MkIIをつかいながらイコライザーカーブの歴史に深く迫っていきたい。