ドルビービジョン+アトモスの威力は?
「アベンジャーズ/エンドゲーム」観るならドルビーシネマが熱い? IMAXと比較した(後編)
具体的に紹介しよう。『エンドゲーム』には、暗転(ブラックアウト)するシーンが3ヵ所ある。なかでも冒頭の “FIVE YEARS LATER” 。黒バックに白文字のこのシーンは、その直前、ソーがサノスを倒す瞬間に訪れる。
通常の映画館では、真っ暗な館内に何も映像のない四角いスクリーンがぼんやりと浮かんでいる。ところがドルビーシネマでは、そのスクリーンの存在を感じさせないのである。真っ暗闇の中で突然、空中に “FIVE YEARS LATER” の白い文字が浮かび上がってくる。
他にも、惑星ヴォーミアでホークアイがナターシャ(ブラックウィドウ)と別れるくだり。そして映画のクライマックスシーンのラストでも暗転する。いずれも誰かの死が訪れた直後である。この暗転が漆黒であればあるほど、その効果は観客の胸に迫ってくるものになる。
そして2台のレーザープロジェクターの超高輝度と幅広い色域が、作品に究極のコントラスト表現をもたらす。
エンディングでスコット・ラング(アントマン)とホープ(ワスプ)、娘のキャシー3人が見上げる夜空の花火。明暗コントラストもさることながら、花火の鮮やかさも際立つ。そしてティ・チャラ国王(ブラックパンサー)とオコエ、妹のシュリの眼前に広がる、アフリカの夜空に浮かぶ満月。
『エンドゲーム』には逆光のシーンも多い。完成した量子トンネル装置に向かうメンバーたち。また惑星ヴォーミアの空に浮かぶ太陽をバックにした案内人レッドスカルの登場シーン。そののち、独り残されたホークアイの背後では、皆既日食が起きている。
いずれもHDRの効果を、監督が喜々として試そうとしているとしか思えない。「IMAXレーザー/GTテクノロジー」版を未視聴なのが残念だが、筆者が観た7バージョンにおいては、ドルビーシネマのコントラスト感が最も良かった。
■ドルビー3Dはエコである
では3D上映における、字幕ズレの問題はどうだろう。ドルビーシネマでは、貸出し方式の専用3Dグラスを使う「ドルビー3D」を採用し、分光方式で左右の映像を分割している。
この分光方式は、光の色スペクトルを応用した技術である。原理的に方向性がないので、首をかしげたところでズレは起きない。※前編記事の初出時、大阪エキスポシティの「IMAXレーザー/GTテクノロジー」について、「ただし3D字幕はどうせズレる」という表現がありましたが、これは誤りでした。該当部分を削除させて頂きました。また後編記事にて「色偏光方式」と誤った内容を掲載していました。お詫びして訂正致します。(2019年5月9日)
そして鑑賞後、3Dグラスを返却する。耐久回数まで再利用(リユース)するので、使い捨ての概念から開放された、いまどきのエコな方式である。