【特別企画】クオリティ志向に使い勝手を両立
ワンランク上の映像体験、BenQ「HT5550」で叶う。“格の違う”4K/HDRプロジェクター登場
まずは評価で定点的に視聴している映画『ハドソン川の奇跡』を再生。HDR10信号を入力すると画質モードは「HDR」に固定される。チャプター5冒頭、サイネージが煌めく夜のタイムズスクエア。ドンと右端を占める星条旗は、赤色が薄く、トーンマッピングが合っていない様子。そもそも同作品はMax CLLが4,000nits設定と非常に高輝度で、とりわけプロジェクターでは表示が難しいタイトルなので、表示機器側での調整が必須だ。
本機の場合、調整項目のひとつである「HDR輝度」を「-2」に設定すると、明部の色飽和が解消されて色が戻り、また、暗部から中間調のトーンも適正なった。少ない手順で適正な画が得られるという点で扱いやすいと言える。一点、プロジェクターではHDR輝度設定が肝だが、本機の場合、メニューの詳細設定まで奥深く辿る必要がある。リモコンのHDRボタンでダイレクトに操作できれば理想的に思った。
画質を語る上で肝と言える絶対的な黒の沈みは、同様の画素シフト技術を利用した同社の初号機HT2550と比べ、大幅に向上しているのが印象的。以前、製品担当者に取材したが、ネイティブコントラスト性能が改善された新世代のDLPパネルを採用しているとのことで納得。暗いシーンでは、暗部階調と色乗りが充分に優秀で、高品位シアターと言える画質に到達した。新設計のレンズもコントラストやピーク感の向上に寄与しているようだ。
HT2550と比べると、解像度面でも大きなアドバンテージが。HT2550はRGBのズレが見られることもあったが、本機では映像の中央部だけでなく、端部にかけても全面的に滲みが抑えられ、クリアな描画が印象的。シフトに用いるガラス板か、レンズの解像力のお陰か、4K素材の情報量をより多く引き出してくれる。
結果、トータルで画に重みが感じられ、被写界深度によるボヤケの表現も良く、奥行の感じられる映像が心地よい。カジュアルシアターとは格の違う、ワンランク上の映像体験ができる。
映画『グレイテスト・ショーマン』は、「HDR輝度」がデフォルトの「0」のままで適正なトーンの画が得られた。HDRのダイナミックさと、明部の豊潤な色乗りが楽しい。DCI-P3を100%カバーする色域の広さはさすがで、特にステージのスポットライトを浴びる衣装の赤色が映える。
また、カラーバランスの良さに感心。色域の広さがスペック的なポイントだが、BT.2020からDCI-P3へのリマッピングも適正なようで、すべての色において彩度と明度が的確。全体のルックとしても違和感がなく映像の世界に浸ることができる。もし視聴の機会に短時間で確認するなら、違和感を覚えやすい赤色に注目すると良いだろう。鮮やかだが、飛び出して見えてしまうことは無い。
ちなみに機能の一つである「カラーエンハンサー」は、プラス側に調整すると、原色の明度が上がって違和感を覚えるが、明るい部屋で色が薄く感じる際の補正として利用するのが良いだろう。
解像感を向上する機能「ピクセルエンハンサー4K」は、デフォルト値が「12」で、この場合、字幕の白と黒の境界にリンギングが目立ち、「0」に調整すると解消した。実際の映像部分は、この機能によって、リンギングのような悪影響は見られず、地面の砂粒と影のような中域成分をきりっとさせる効果が確認できた。字幕のリンギングが気にならなければ、デフォルト設定も悪くない。
話題の『ボヘミアン・ラプソティー』では、各種映像モードを確認。「Cinema」モードは少し明るい部屋を想定していて、ガンマ的にも中間調が見えやすい設定。「D.Cinema」は暗室向けで、いわゆるガンマが強め。明るい部屋では暗部の階調が見えなくなるが、完全な暗室では黒が沈んで落ち着き、色はフィルムライクで豊潤になる。暗室と少し明るい部屋を想定した映像モードが用意され、それぞれを簡単に切り替えて適切な映像が得られるという点で、扱いやすく感じた。
「HT2550」で4K/HDRプロジェクターの存在を広く知らしめたBenQ。今年は、カジュアル路線の後継モデル「HT3550」に加え、本機「HT5550」が加わったことで、選択肢が広がったのはユーザーにとって歓迎すべきだろう。
プロジェクターを使いたい時だけ引っ張り出して使うなら「HT3550」で明るく元気な映像を、リビングや専用室に天吊りするなら本機「HT5550」で黒が引き締まりリッチな色をじっくり鑑賞を、というシーンや用途に合った選び方ができる。
4K放送も始まり、コストも意識しつつ、4K/HDRの映像美をより楽しみたいシアターファンにピッタリの1台だ。
(特別企画 協力:BenQ)