著名ブランドから新興メーカーまで
“手の届く価格”の優秀スピーカーに注目 ー 独HIGH ENDで聴いた「特別な音」<2>
昨年のHighEndレポートでも紹介した通り、展示を全体にわたって見渡すとアクティブスピーカーの比率がかなり高まっていることに気付く。昨年はダリの取り組みを紹介したが、それに加えて今年はエラックやピエガからもハイファイ仕様の製品が登場し、主力モデルと位置付けて展開していた。(昨年の山之内氏によるレポートはこちら その1、その2)
GenelecやMusikElectronicGeithainなどモニタースピーカーを牽引するブランドの存在感もドイツのオーディオイベントでは想像以上に大きいし、LSXを前面に打ち出したKEFのようにアクティブスピーカーに舵を切ったかと思わせる展示も目を引いた。エントリーからハイエンドまで巻き込んだパワードスピーカーへの流れは今後もますます強まることが予想される。
■山之内氏が注目したプロトタイプ2製品
完成間近のプロトタイプもいくつか展示されていが、ここではそのなかから注目の2製品を紹介しておこう。
ウィーンアコースティックは“Reference”と銘打った新シリーズのプロトタイプを展示した。既存の「Beethoven Concert Grand」「Beethoven Baby Grand」の後継となる2つのフロア型モデルで、前者の後継が3ウーファー、後者が2ウーファーという構成は共通ながら、ミッドレンジを含むユニットをフラット振動板に変更している点が新しい。特にミッドレンジは内周と外周で異なる振動板を組み合わせた二重構造が目を引く。
新ユニットは「Liszt」など上位モデルに先行して採用されていたフラット振動板技術を応用して開発されたもので、ポリマーやグラスファイバーなどのコンポジット素材と補強リブを組み合わせた構造に特徴がある。ウィーンアコースティックと言えば透明なスパイダーコーンがトレードマークだが、今後は剛性が高く歪が少ないフラットスパイダーに主力が移行していくことになりそうだ。
会場ではまだ音を出していなかったが、現在は細部の仕様を追い込んでいる段階とのことで、秋以降の発売を目指しているという。今後、ウィーンアコースティックの主力スピーカーの一つとして成長が期待できる製品だと思う。
TADはフラグシップの「Reference One Mk2」を7年ぶりにリファインし、モノラルパワーアンプ「M600」の後継機(試作機)とともに公開した。スピーカー本体は外見上はほとんど変更点はなく、同軸ユニットも前作と同じ素材と構造を受け継いでいるが、ウーファーの磁気回路やキャビネット構造にメスを入れることで大幅な音質改善を図ったという。
ハイエンドスピーカーの主要な技術トレンドの一つが低音の質感改善だが、Reference Oneもその流れに沿った進化を遂げることになりそうだ。現時点でほぼ完成形とのことだったので、早ければ夏から秋にかけて正式にリリースされるのではないだろうか。
(山之内 正)