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最大32chのマルチチャンネル処理にも対応

1チップで音声操作もアトモスも。クアルコムのSoC「QCS400シリーズ」が可能にするAVの未来を予測

公開日 2019/06/25 06:30 鴻池賢三
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製品予測 その3:多様化するAVアンプ

統計データを見ると、AVアンプ(AVレシーバー)の出荷台数は、かつてと比較して停滞気味と言える。ホームシアターファンには必須アイテムだが、特に日本の一般消費者にとっては、特にそのサイズは導入のハードルになっていると感じる。サウンドバーなどに比べれば、価格もより高い。

AVアンプがいずれのメーカーも似たり寄ったりになってしまうのは様々な要因があるが、いわゆる老舗メーカーの製品がほとんどで新興メーカーが登場しないことも理由のひとつではないだろうか。先述のサウンドバー以上に多チャンネルを扱うAVアンプは複雑で、参入障壁は極めて高い。

筆者もAVアンプの商品企画に携わっていた経験があるが、やはりDSP周りのソフトウェア開発は大きな負担で、そうしたコストが製品価格を押し上げるのだ。特に最近はフォーマットの進化が早く、さらにドルビーアトモスやDTS:Xといったオブジェクトオーディオはより強力な処理能力が必要なためDSPが複数個必要など、システムは肥大化を続けてきた。さらに、ハイレゾやネットワーク再生など機能が増えるにも関わらず、AVレシーバーの単価は右肩下がり。出荷数量の減少も合わせると採算を取るのが難しいのはご理解いただけるだろう。新興メーカーは手を出したくないジャンルに違いない。

しかし、QCS400シリーズが利用できれば話が変わる。先述の通り、ワンチップでドルビーアトモスやDTS:Xなどのデコードやレンダリングが可能で、しかも最大32chに対応できる。たったひとつの小さなチップで、現存する最高性能のAVレシーバーを遥かに上回る機能を内包するのだ。特にAVアンプ向けの「QCS407」は、高度なGUI表示機能を備え、スマホレベルのグラフィカルな操作画面も構築できる。

筆者の想像だが、AVアンプは以下のように多様化するだろう。

1. 格安製品の登場
アナログのAVアンプが製造できる工場なら、最新鋭のAVアンプが開発・製造可能になる。

2. 超小型化
今まで大きな面積を必要としていたデジタル基盤が指先サイズのチップに集約される。クアルコムの高効率なフルデジタルアンプ「DDFA」も組み合わせれば、弁当箱サイズのAVアンプも夢ではないだろう(もちろん端子分の面積は必要だが)。

3. 超多チャンネル化
従来のAVアンプと同等サイズのボディで、11.2chを遥かに超え、スーパーハイビジョン放送の22.2ch対応品も実現するかもしれない。「QCS407」と「DDFA」の組み合わせなら、消費電力が少なく、電源も小さくできそうで実現性は高い。

4. 新メーカーによる想像を絶するニュータイプ
従来、ほんの一部を除きAVアンプは大手老舗しか作っていなかった。扱い易いSoCの登場で参入障壁が下がると、いろいろなルーツやアイデアを持った企業が、それぞれ自由な発想でAVレシーバーを製品化するかもしれない。

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