海上忍のラズパイ・オーディオ通信(57)
ワイヤレスもAudio over IP時代へ、ラズパイのいまと次フェーズを考える
最近、ラズパイを積んだコンポーネント・オーディオの話をよく耳にする。もちろん、基板を確認したうえでの話だから間違えようはない。筐体内部を見ないにしても、製品の機能や再生スペックから判断して、“ラズパイ入ってる”に違いない、といった疑惑(?)レベルの話も含めれば、数はさらに増える。
メーカーが公式発表していないかぎり具体的な製品名に言及することは憚られるため、奥歯に物が挟まったような言い回しになってしまうが、ラズパイの採用は大いに歓迎すべきこと。改修/改良箇所は公開してユーザコミュニティに還元する、というオープンソースの理念に沿った行動がとられれば、ラズパイ・オーディオどころかデジタルオーディオ界隈におけるソフトウェア技術のレベルアップにつながるからだ。
それはさておき、ラズパイをコンポーネント・オーディオに搭載するにあたっての課題や今後の方向性は、一企業限定とは考えにくい。おそらく、製品化に至るまでは似たような問題に直面しただろうし、これからどのように活用していくかという部分に共通項は少なくないはずだ。今回は、最近のラズパイ関連ネタを振り返りつつ、次のフェーズを考えてみたい。
■Compute Moduleの進化
Compute Moduleは、組み込み用途を前提としたラズパイ。パソコンのメモリモジュールを彷彿とさせる外観は伊達ではなく、ノートPCで一般的なDDR2 SO-DIMMとサイズは同じ、同規格のスロットを利用できるよう200ピンが用意されている。
そのCompute Moduleの最新版「Compute Module 3+(CM3+)」が今年1月にリリースされた。従前の「3」と比較すると、SoCはBCM2837A1(4コア/1.2GHz)からBCM2837B0(4コア/1.4GHz)に強化され、eMMC(オンボードのストレージ)容量は4GB/なしの2択から、8GB/16GB/32GB/なしの4択へとバリエーションが増えた。
オーディオ機器に組み入れてネットワークモジュール -- オーディオ再生専用OSビルトインのシングルボードコンピュータをオーディオ業界ではそう呼ぶ -- として使うには、Raspberry Pi 2のスペックでも十分足りていたことを思えば、すでにスペック的には申し分ない水準。機能充実のLinuxディストリビューションを格納しておくには少々窮屈だった4GBというeMMCの容量も、8GB以上に増えている。
Compute Moduleは、オーディオ用にはおそらくベストな選択だろう。電源を完全に分離した設計を採用できるし、USBやEthernetといったチップも自由に選べる(Raspberry Pi 3 Model B+はEthenetとUSBがバスを共有するLAN7515を採用)。GPIOのコネクターやWi-Fiアンテナの位置も設計次第だ。
しかし、トータルではコストが嵩む。CM3+(8GB)は約30ドルという価格だが、USBにEthernet、Wi-FiにBluetooth、GPIOコネクター、そしてCM3+自身を積むためのDIMMスロットを用意しなければ使いものにならないからだ。一方、それらすべてを標準装備するRaspberry Pi 3 Model Bは、40ドル程度。USBやEthernetを配した基板を設計する必要もない。
ということは、高級モデルではCompute Module、それ以外は“素のラズパイ”ことRaspberry Pi 3 Model Bという棲み分けが始まるのか...いや、オーディオ機器へのラズパイの採用事例はごくわずかで、世間的にはまだ始まってもいないのだから、この際どちらが採用されても構わない。ただ、採用したメーカーには採用の事実を明らかにして、オープンソースソフトウェアの成果を開発コミュニティにフィードバックしてほしいものだ。
メーカーが公式発表していないかぎり具体的な製品名に言及することは憚られるため、奥歯に物が挟まったような言い回しになってしまうが、ラズパイの採用は大いに歓迎すべきこと。改修/改良箇所は公開してユーザコミュニティに還元する、というオープンソースの理念に沿った行動がとられれば、ラズパイ・オーディオどころかデジタルオーディオ界隈におけるソフトウェア技術のレベルアップにつながるからだ。
それはさておき、ラズパイをコンポーネント・オーディオに搭載するにあたっての課題や今後の方向性は、一企業限定とは考えにくい。おそらく、製品化に至るまでは似たような問題に直面しただろうし、これからどのように活用していくかという部分に共通項は少なくないはずだ。今回は、最近のラズパイ関連ネタを振り返りつつ、次のフェーズを考えてみたい。
■Compute Moduleの進化
Compute Moduleは、組み込み用途を前提としたラズパイ。パソコンのメモリモジュールを彷彿とさせる外観は伊達ではなく、ノートPCで一般的なDDR2 SO-DIMMとサイズは同じ、同規格のスロットを利用できるよう200ピンが用意されている。
そのCompute Moduleの最新版「Compute Module 3+(CM3+)」が今年1月にリリースされた。従前の「3」と比較すると、SoCはBCM2837A1(4コア/1.2GHz)からBCM2837B0(4コア/1.4GHz)に強化され、eMMC(オンボードのストレージ)容量は4GB/なしの2択から、8GB/16GB/32GB/なしの4択へとバリエーションが増えた。
オーディオ機器に組み入れてネットワークモジュール -- オーディオ再生専用OSビルトインのシングルボードコンピュータをオーディオ業界ではそう呼ぶ -- として使うには、Raspberry Pi 2のスペックでも十分足りていたことを思えば、すでにスペック的には申し分ない水準。機能充実のLinuxディストリビューションを格納しておくには少々窮屈だった4GBというeMMCの容量も、8GB以上に増えている。
Compute Moduleは、オーディオ用にはおそらくベストな選択だろう。電源を完全に分離した設計を採用できるし、USBやEthernetといったチップも自由に選べる(Raspberry Pi 3 Model B+はEthenetとUSBがバスを共有するLAN7515を採用)。GPIOのコネクターやWi-Fiアンテナの位置も設計次第だ。
しかし、トータルではコストが嵩む。CM3+(8GB)は約30ドルという価格だが、USBにEthernet、Wi-FiにBluetooth、GPIOコネクター、そしてCM3+自身を積むためのDIMMスロットを用意しなければ使いものにならないからだ。一方、それらすべてを標準装備するRaspberry Pi 3 Model Bは、40ドル程度。USBやEthernetを配した基板を設計する必要もない。
ということは、高級モデルではCompute Module、それ以外は“素のラズパイ”ことRaspberry Pi 3 Model Bという棲み分けが始まるのか...いや、オーディオ機器へのラズパイの採用事例はごくわずかで、世間的にはまだ始まってもいないのだから、この際どちらが採用されても構わない。ただ、採用したメーカーには採用の事実を明らかにして、オープンソースソフトウェアの成果を開発コミュニティにフィードバックしてほしいものだ。