従来機「QC35 II」比較で進化点をチェック
ボーズの新NCヘッドホン登場! 「Noise Cancelling Headphones 700」速攻レビュー
ミュージカル映画「美女と野獣」のサウンドトラックから、エマ・ワトソンが歌う『朝の風景』では、オーケストラの演奏による雄大な情景が広がる。NCH700ではノイズのない静寂感が実現できたことで、空気の透明感がQC35 IIよりもグンと高まったことを特筆しておきたい。弦バスやティンパニの低音はQC35 IIよりも足元がやや軽くなってしまったようにも感じるが、そのぶん立体的で優しい丸みが加わっている。エマ・ワトソンの歌声も明るく快活だ。NCH700はQC35 IIよりもフィットする音楽のジャンルが広く感じられる。
tofubeatsの「クラシカロイド モーツアルト ムジーク」から、星咲花那が歌う『アイネクライネ・夜のムジーク』でも活き活きとしたボーカルが炸裂する。NCH700は中高音域の分離がよく、ボーカルがとにかく気持ちよく聴けるノイスキャンセリングヘッドホンだ。
打ち込みのリズムはバネが効いていてとてもしなやか。QC35 IIのふくよかな低音の量感とはイメージがだいぶ様変わりしているが、それぞれに得意とする音楽の再現性が異なるキャラクターの違うヘッドホンが出揃って、ボーズのラインナップが充実したことを素直に喜べる。
ワイヤレスと付属のケーブルによる有線接続の音質についても、グーグルのPixel 3a XLに接続して比べた。解像感と力強さのバランス、ナチュラルな音色表現など接続方法を変えてみてもNCH700らしさに変化はない。
ノイズキャンセリングのカスタムバランス調整は有線接続の時にも使える。例えば飛行機の中でスマホと機内エンターテインメントの両方を本機でシームレスに楽しめそうだ。なお有線接続の場合、本体の電源をオフにしても音は聴けるが、明らかに中味のない空虚な音に変わってしまうので、この使い方はあくまでバッテリーが切れてしまった時のエマージェンシーとして位置付けた方がよいと思う。
NCH700は、ボーズのアクティブノイズキャンセリングヘッドホンの技術が、大きな飛躍を遂げたことを強く感じさせてくれる新製品だ。装着感のところなどアレンジを試みながら、またしばらくの間じっくりと使い込んでみたいと思える力作である。
世の中的には固まってしまった感のある「ボーズのノイズキャンセリングヘッドホン」のステレオタイプを、ボーズ自らが大胆に脱皮を図るために作り上げたチャレンジングなモデルとして、大いに歓迎したいと思う。これもボーズの定番シリーズに成長していくのだろうか。とても楽しみだ。
QuietComfortシリーズを愛用するユーザーには、ぜひ新モデルのNCH700を体験してみてほしい。
(山本 敦)