完全自社設計DACによる新たな表現
演奏に込められた躍動感とエネルギー全てを引き出す − エソテリックが極めた最高峰DAC「Grandioso D1X」レビュー
■舞台後方に広がる、傾斜の強い客席の情景が目に浮かぶ
ホールトーンに代表される空間情報の再現力は、これまでのエソテリック製DAコンバーターの中でも最上の水準に到達している。響きが左右と後方に広がるのは期待通りだが、それに加えて天井方向にもふわりと浮かび、「余韻の雲」がスピーカー上方に広がる。コンセルトヘボウ管のマーラー《復活》はその好例で、このホールの舞台後方に広がる傾斜の強い客席の情景が目に浮かぶようだ。
D1Xがサポートする信号形式は非常に幅が広い。具体的には768kHz/32bitのPCM信号、22.5MHzのDSD信号に加え、MQAにも対応を果たしており、P1Xとの組み合わせではMQA-CDの再生も行える。N-03Tで再生したMQA信号はD1X側でフルデコードされ、低重心かつ鮮度の高い再生音を楽しむことができた。
Grandiosoシリーズの存在は、エソテリックにとって特別な意味がある。今回も他のレンジでは価格の制約で諦めざるを得ないような課題にあえて挑戦し、確実な成果を生むことに成功した。今後、その成果を他の製品にどう活かしていくのか、注視していきたい。
(山之内 正)
■「Master Sound Discrete DAC」に注目すべき理由 |
デジタルオーディオに革新を与え続けてきたエソテリックのマイルストーンエソテリックはブランドとしての一号機となるP-1/D-1をはじめとして、常にその時代の最先端を示すプロダクトを世に送り出してきた。また、2004年に発売されたD-01では、世界で初めて左右別体としたモノラル構成のDAコンバーターを実用化し、その結果実現する圧倒的なセパレーションや定位の良さを知らしめたことも見逃せない。 今回、本稿にてご紹介しているGrandioso D1Xに搭載されたディスクリートDACも、そんなエソテリックらしさ溢れる最先端オーディオへの想いが結実したものとなっている。 その基幹を担うのが「Master Sound Discrete DAC」。驚くべきは、その物量の投入だ。2基のFPGAや32エレメントから成るDAC回路以外にも、片chあたり2基用意されたバッファーアンプHCLDなど、随所にエソテリックが培ってきた技術が盛り込まれている。さらには、DACを構成する抵抗やロジック素子など、優れたパーツを使いこなすノウハウが盛り込まれていることも見逃せないポイントと言っていいだろう。 確かに、ディスクリートDACを搭載する製品は世の中にすでに存在する。しかし、Master Sound Discrete DACの場合は、30年以上にわたりデジタル再生の最前線をひた走ってきたエソテリックだからこそ可能となったDACとして、とりわけ大きな存在感を持っていると言っても過言ではないだろう。(編集部) |
<Specification>
【アナログ音声出力】●出力端子:XLR×1、RCA×1 ●出力インピーダンス:XLR 100Ω、RCA 47Ω ●最大出力レベル(1kHz、PCMフルスケール信号入力、10kΩ負荷時):XLR 5.0Vrms、RCA 2.5Vrms ●周波数特性(192kHz PCM信号入力時):5Hz〜75kHz(−3dB)●S/N:113dB ●歪率(1kHz、DA コンバーター動作モードM3 設定時):0.0007%
【デジタル音声入力】●ES-LINK端子:2系統、入力信号形式 リニアPCM(ES-LINK5 フォーマット) 44.1〜768kHz/48bit、DSD(ES-LINK5 フォーマット) 2.8/5.6/11./22.5MHz ●XLR端子:1系統、入力レベル 5.0Vp-p、入力インピーダンス 110 Ω、入力信号形式(DUAL 接続時)リニアPCM(DUAL AES フォーマット)88.2〜384kHz/16〜24bit、リニアPCM(ES-LINK3 フォーマット)88.2〜192kHz/48bit、DSD(ES-LINK1、ESLINK2、DoP フォーマット)2.8MHz、入力信号形式(SINGLE 接続時) リニアPCM(AES/EBU フォーマット)32〜192kHz/16〜24bit、DSD(ES-LINK1、ESLINK2、DoP フォーマット) 2.8MHz ●RCA端子:2系統、入力レベル 0.5Vp-p、入力インピーダンス 75Ω、入力信号形式 リニアPCM(IEC60958 フォーマット)32〜192kHz/16〜24bit、DSD(DoPフォーマット)2.8MHz ●光デジタル端子:1系統、入力レベル −24.0〜−14.5dBm peak、入力信号形式 リニアPCM(IEC60958フォーマット)32〜192kHz/16 〜24bit、DSD(DoP フォーマット)2.8MHz ●USB端子(USB2.0 準拠):1系統(B端子)、入力信号形式 リニアPCM 44.1〜768kHz/16〜32bit、DSD 2.8/5.6/11.2/22.5MHz
【クロック入力】●BNC端子:1系統、入力インピーダンス:50Ω、入力可能周波数:10MHz(±10ppm)、入力レベル:サイン波0.5〜1.0Vrms
【一般】●消費電力:20W ●サイズ:445W×132H×448Dmm(突起部含む)●質量:Lch/23.1kg、Rch/23.0kg ●取り扱い:エソテリック(株)
本記事は季刊・Net Audio vol.34 Summerからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。