驚くべきスピーカー制動力
“小は大を兼ねる”プリメインアンプ。Hypex Ncoreモジュール採用、ティアック「AX-505」を聴く
■アナログ的な豊潤な倍音が楽しめる
その後、いろいろなフォーマットのハイレゾ音源をNT-505のUSB入力から再生したが、特にハイレゾ音源でスタンダードになっている96kHz・192kHz/24bit、2.8MHz DSDにおいて、アナログ的な豊潤な倍音を引き出してくれることは大きな魅力であると感じた。
例えばアラベラ・美歩・シュタインバッハー「R.シュトラウス:ヴァイオリン協奏曲」(48kHz/24bit)を再生しても、ヴァイオリンソロの木質感たっぷりで、膨らみのある胴の響きを濃厚な音で再現。弦楽パートのきめ細かで美しい響きを体験することができるのである。
別途で、常用のSACDプレーヤーをRCA入力に接続して再生したが、本機は伝送特性にも優れており、SACDプレーヤーの音質を十分に引き出していることにも感心させられた。これならSACDプレーヤーのみならず、同社のレコードプレーヤー「TN-4D」を接続し、レコードも楽しみたくなるのである。今回はNT-505を組み合わせて聴いたが、ここにクロックジェネレーター CG-10Mを接続すれば、AX-505が備える広く、そして深い空間再現性や解像度をさらに引き出すことも可能になるはずだ。
コンパクトで高品位なオーディオに改めて注目が集まる時代となり、音質とデザインの良さはもちろん、遊び心を感じさせることも製品に求められる大切な要素のように思える。AX-505にはまさにそのような魅力を備えており、一方でサイズからは想像できないスピーカー制動力でもって聴かせてくれる。冒頭に述べた“小は大を兼ねる”をまさに体現する、現代を象徴するようなプリメインアンプと言えるだろう。
(角田郁雄)